【1-12】
「本当にお世話になりました」
「まだ無理はしないで、少しずつだからね」
病院の入り口で、看護師さんから花束を受け取る真弥。
「本当に、リハビリ頑張ったからね。夏休みはゆっくり体力をつけてください。お姉さんにも皆勤賞をあげたいくらい。妹さんに無理をさせないようにね」
「はい。気を付けます」
あの手術から1か月が経ち、真弥の退院の日。
今日は日曜日。梅雨が明けた外は快晴で、朝から抜けるような青空。退院する真弥へのプレゼントかもしれない。
あの日の約束どおり、美弥は学校の帰りの日だけでなく、週末も毎日病室に通い続けた。
ICUから一般病室に移ったときも一緒にいた。その安心感が真弥の回復を早めているとも看護師さんは教えてくれていたほどだったから。
学校では修学旅行から戻ったクラスメイト達がお見舞いをしたいと申し出てくれたけれど、気持ちだけ頂いて伝えると丁寧に対応してきた。
だから学校に試験登校するのは、夏休み前の1週間ほど。それまでは自宅学習だったり、体力のリハビリに専念することになると、妹のクラスに出向いて説明もしてきた。
自宅に戻ると、両親も仕事を切り上げ帰ってきてくれていた。
「ただいまぁ……」
「お帰りなさい」
「うん……」
「よく、頑張ったな」
「うん……」
そのまま二人に抱きかかえられる妹を、美弥はそっと見守っていた。
「美弥、おまえもよく支えてくれたな」
「私? ううん。私の方が真弥に支えられてた……。だから、今日は私は大丈夫」
それは本当の事。真弥がここまで頑張れる子ではなかったら、彼女自身も途中で折れてしまっていたかもしれない。
「お姉ちゃん、先生が大体半年をかけてのリハビリだっていうから、またあの公園とか連れて行ってね」
「もちろん。それが私ができることだからね」
その日は、奇しくも真弥の誕生日だったから、彼女の第2の人生が始まった日でもあったのだけど、その半年後に運命というものが彼女に再びの試練を与えるだなんて、この時の誰もが想像するなんてことはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます