【1-10】
「明日は何時に病院に行けばいいの?」
「11時には入ってくださいって言ってた」
先日の診察の翌日に病院から連絡が入り、特に今は落ち着いている情況で体力もある状態だから、真弥の決心が変わる前に手術を行ってもいいだろうという連絡を受けていた。
その日程は1週間後の木曜日に入院、翌日が手術という日程に決まった。
平日なので、入院の日に美弥が付き添ってやることができない。その話には両親が入院に付き添うということで話はすでにまとまっている。
それを学校に報告すると、担任と保健室の先生の間で話し合いがもたれたらしく、先日のハプニングが起きた原因ともなる教室の雰囲気の問題だけでなく、大きな手術の前に風邪などをひいても大変だということで、保健室での自習に切り替えてもらうこともできた。
入院の前日の夕方、真弥は病院に持っていく荷物をバックに入れ始めた。何度かの入院を経験している彼女にはいつもの作業なのかもしれない。
「どうしたの? 早く寝ようよ」
美弥は用意が終わっても座ったままの真弥を呼ぶ。
「ねぇ、どうしたの?」
真弥の体か小刻みにふるえている。発作か? 美弥はぎょっとして駆け寄る。
「お姉ちゃん、わたし……、怖い……」
入院というだけなら今回が初めてではない。でも今回ばかりは話が大きい。明日からのことを考えると不安だという気持ちも十分に分かる。
「でも、真弥は元気になりたいんでしょう?」
潤んだ目でうなずく真弥。
「真弥だけが怖いんじゃない。私だって怖いよ。でも必ず元気になるって約束したじゃん。私毎日行くよ。寂しい思いさせないから」
「ほんと……? 毎日来てくれる……?」
「当たり前じゃない、約束する」
そんなことをわざわざ約束するまでもない。学校帰りに毎日病院に寄ることは最初から心の中で決めていたことだから。
学校のプリントなども、クラスメイトではなく美弥に預けることになっている。
「よかった……。一緒のお布団で寝てもいい?」
中2にもなっても、彼女は時々一人では眠れないと言う。そんなときは同じ布団で姉に抱きついて眠ることもある。
「いいよ、明日早いんでしょ?」
真弥は電気を消すと、美弥の胸元に顔を埋めた。
「いつもちいさい子供でごめんなさい。わたし…、もっとお姉さんになるから…」
「私の前は今のままでいいよ。おやすみ」
美弥は、心細そうに震える真弥の顔をなでてから目を閉じた。
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