閑話 新入生事前指導

3月もそろそろ終わり。

僕は母と共に、入学の決まった浦浜第一高校を訪れていた。というのも、今日は新入生事前指導日だからである。主に教科書や体操服等の用具の受け取りである。今日は孝介とは別行動だ。


「ふーん、私たちの頃と変わってないのか」


久々に母校を訪れた母が懐かしげな声をあげている。というか、軽く30年は前だけどこの学校大丈夫か?昨今の地方財政を見ればさもありなん、という感じではあるけれど。


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一通りの物を揃え、最後に芸術科目の教材受け取りとなった。ちなみに僕は、字も絵も悪い意味で非常に芸術的なものが出来上がだてしまうので、消去法で音楽選択である。


音楽の列に並ぶと、前には見覚えのあるポニーテールが。


「あ、辻村誠実」


そう言って小さく手を振ってくるのは件の不知火灯である。のだが僕はそれどころではなかった。その横にいるスキンヘッドの男性が見るからにやばい。有り体に言って超こわい。


「パパ、辻村くん。頭がいい子」


ですよねー。状況的にまあお父様ですよねー。というかパパ呼びなんですね、年頃の女の子にしてはお父様と仲がよろしいようで。


「こんにちは」

「ど、どぅもぉ」


微妙に目が笑ってないのやめてもらっていいっすかね。キョドっちゃったじゃないっすか。


「あらあらどうもー、こんにちは〜」


余裕で入り込む母、すごいな。母は強いってやつか。

不知火父も普通にやりとりしているようだ。そうじゃなきゃ困るけど。


受け取りが終わると母に膝でどつかれる。


「ちょっと〜、もう知り合い?高校生活エンジョイしちゃう感じ?このこの〜」


ダルい。非常にダルい。孝介もそうではあったが、やはり中年女性侮り難し。


「違う、発表の時にたまたま会っただけ」

「ふーん」


母は「わかっちゃった」という顔をしているが、どう考えても誤解している。もう好きにしてくれ。


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「辻村さん」


帰り際、1人の男性教師に呼び止められた。


「はい?なんでしょう」

「辻村さんの入試成績がトップでしたので、入学式での新入生代表挨拶をお願いしたいのです。お早めにお返事ください」


へ?


「よっしゃぁぁぁぁ!!」

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