番外編 有栖の葛藤

*番外編です。本編の32話と32.5話を読んだ後にごらんください。




「光星くん、寝ましたか?」

「………」

「これは完全に寝てますね」



有栖はそう確信した。確信した後にすっと指を伸ばす。



「光星くんも私の頬をつついてたし、許可も貰いました。なので私も触ります」



何故かきちんと宣伝した。光星は突いただけではないが、有栖は寝ていて頬をモフモフされた記憶はない。



「あ〜、私触ってしまいました」



一度突いた後に、もう二、三度突く。



「これは癖になりそうです」



そう言い、たくさん突いた。そして新たな葛藤が生まれる。



「……手の平当てたら怒られますかね?でもバレないですよね」



そう思い、小さな手のひらを頬に当たる。さらに両手を当てて、モフモフした。



「流石に髪の毛は駄目ですよね………。柔らかそうでふわふわしてる。触りがいがありそう…」



ゴクリっと唾を飲み込む。



「私、こんな気持ち初めてです……」



胸を触るとドキドキしている。



「違います。これは初めての経験に緊張しただけです!」



自分にそう言い聞かせた。その後、深呼吸を行い呼吸を整える。



「ピーーー!」

「きゃっ!」



炊飯器の炊き上がりの音がリズム良く鳴る。有栖はその炊飯器をジッと眺めた。



「炊飯器の音ですか、びっくりしましたよ。……光星くんは起きてないですよね」



恐る恐る下の方を見る。光星はまだ熟睡していた。ここで起こしてしまうのは非常に申し訳ない。



「今日はたくさん迷惑をかけてしまいました…。疲れるのも当然ですよね」



起こさないように、優しく頬を撫でる。



「それに明日からは…………また迷惑かけるかもしれないです」



そう言いつつも、有栖はしばらくの間ニヤつきが止まらなかった。







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