番外編 消えたパプリカ

*番外編です。本編の25話を読んだ後にご覧ください。




「そういえば、パプリカも買った筈なんだけどな」

「うっ………」



レジ袋の中から買った商品を取り出す。あのパプリカはよく覚えている。何故なら、赤くなった有栖の顔とパプリカの色を見比べたからだ。




「有栖、パプリカ知らない?」

「は、はい知らないですよ」



有栖が凄く怪しい。その証拠に当たりをキョロキョロしながら落ち着きがない。




「本当か?なんか怪しいぞ?」



俺はジーっと眺める。数秒間目が合い続け、先に有栖の方が口を開いた。




「分かりました。怒らないって約束するなら本当の事を言います」

「分かった。怒らない」



有栖は一息置いた後に話し始めた。




「元の場所に戻しました」

「それはなんでだ?」

「嫌いなんですよね。パプリカ」



元に戻したと言ってもそんなチャンスがあったか?目を離さずに見ていた筈なんだけが………。




「いつ元の場所に戻したんだ?」

「光星くんが、お婆ちゃんと話してる時にさっと取りました。そして光星くんがお母様と電話が終わった後に、走って直しました」




俺はてっきり拗ねて走ったのかと思ったが、そういう事だったのか。




「有栖、カレーに入れる野菜の量増やすからな」

「怒らないのでは?約束は?」

「怒ってないだろ?ただ不足した分の野菜を補っただけじゃないか」

「理不尽です」



そう言い、頬を膨らます有栖がとても可愛いかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る