第4話 白ずくめの少女

黒ずくめの少女は私に構わず話を続けた。

「ようやくあんたは、親か親友に相談しようとした。でも、時々見かける親友は、華々しかった。一人は別の中学校で友達がたくさん出来たと楽しそうな手紙を送ってきた。同じ中学校の一人は陸上部のエースになって、休む間もなく練習の日々。最後の一人は絵の才能があって、漫画家目指してまっしぐら。雑誌に投稿するレベルになり、ファンクラブまで出来る。」


私は見えない身体を抱き締めた。魂の私に本当の身体はないはずだけど、両腕で精一杯自分を抱き締めた。


「父親は仕事が忙しくて、いつも疲れていた。母親は専業主婦だったけど、その頃からパートを始める。でも、パート先で上手くいかず、いつもイライラしていた。

楽しそうな親友に、疲れてピリピリしている両親。どうしても、自分の本音が言えなかった・・

そして、とうとう疲れはてたあんたは、カッターナイフで自分の手首を」


「もう、ヤメてッッ!!もう聞きたくない!!ヤメろーーッ!!!」

私は無我夢中で叫んだ。立ち上がり、耳を塞いだ。気が狂いそうだった。


そのとき、

「そうよ。もう、やめなさい」

落ち着いた、優しい声が遥か頭上から聞こえた。


私は恐る恐る上を見上げると、淡く、白い光に包まれて少女がゆっくりと降りてきた。


その少女は、白い長髪のポニーテールに、白くて丈の長いワンピース、白いフリルの靴下、白い靴、そして雪のように更に白い肌。眼は少し小さなたれ目で瞳は淡いピンク色をしていた。黒ずくめの少女の方が可愛い顔立ちだが、白ずくめの少女の方が、優しげで、人に安心感を与える落ち着いた雰囲気だった。


私の目の前に降り立った白い少女は、私の目を見てから、申し訳なさそうに頭を下げた。


「ごめんなさい。酷い話を聞かされて辛かったでしょう?あの子のやり方は本当に嫌いだわ。人生の辛い部分しか聞かせないなんて」


黒ずくめの少女は、

「嘘は言ってないわよ!」と鋭く反論した。


白ずくめの少女は反論を無視して、微笑を浮かべて、私に語りかけた。

「きっとあの子のことだから、自己紹介もしていないわよね。私の名前はシロ。あの子の名前はクロ。これでも、双子の姉妹なのよ。

似てないでしょう?」


シロという名の少女の優しい声と落ち着いた口調に、高ぶった感情が少し治まり、私はヘナヘナと座り込んでしまった。

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