第14話 勝利
「
僕が一言つぶやくと、右手の杖が剣へと変化した。
そして、クールノの剣撃を受ける。難なく僕は攻撃をかわした。
この程度なら、転生前と同じで、僕の勝利は揺るがない。
だが、クールノは獰猛な笑みを浮かべた。
「これで終わりじゃないさ。
クールノの影が床に広がりし、それが部屋の壁を覆う。
そして、その闇の中から、百以上の剣が浮かび、その剣先を僕へと向けた。
「れ、レノ……」
不安そうに、アウレリア王女がつぶやく声がする。
だが、僕はまったく恐れてはいなかった。
たしかに、今の僕は、転生後で本調子ではない。影もないし、魔法を完璧には操れない。
一方で、クールノは四百年長く生きているという有利さがある。
だが……。それでも、クールノは僕の敵ではなかった。
僕が星剣を一閃させると、クールノの闇の剣はすべて消え去った。
もともとの魔力量に差がある。
さすがにクールノは焦った表情を浮かべていた。
そんなクールノに、僕は声をかける。
「クールノ。君は、ユーグやコレットのような努力家じゃない。何もしていなかったわけじゃないとは言うけど、たいして魔法の訓練も積まなかったんだろう?」
「馬鹿にしやがって……」
「図星か」
七賢者が魔王を倒し、この国を支配した時点で、敵はいなくなった。ユーグたちにとって、やがて転生してくる僕を除いては、対抗するほどの力を持つ魔術師はいなかった。
才能ある人間がいたとしても、魔術に習熟する前に七賢者によって闇に葬られていただろう。そんな環境で、クールノのような人間が魔法の研鑽を行い続けるはずがない。
もちろんコレットのような魔法理論の研究が趣味のような賢者もいたが、クールノは……怠惰で、傲慢なだけだった。
「くそっ」
クールノは、ふたたび僕を攻撃しようと身を構えたが、僕の剣が先に迫る。クールノは僕が幼い少年に転生しているからといって、なめすぎていたわけだ。
最後の手段とばかり、クールノは、鎖で拘束されているクロエに手をかけようとした。
「この少女がどうなってもいいと……え?」
クールノがクロエに剣を突きつける前に、僕の剣はクールノの胴体を真っ二つに切り裂いていた。
クールノは血を吐き、その場に倒れる。
だが、絶命はしていないようだった。なにせクールノは魔力の力で、不死となっている。
逆に言えば、魔力さえ切れれば、クールノは死ぬのだ。
徐々に回復してくるクールノの体に、僕はふたたび剣を突き立てた。クールノが「ぎゃああああっ」と苦痛の叫びを挙げる。
ただの殺人者となったクールノに、同情する必要はない。
「あと何回分の命が君には残っているのかな」
僕はクールノの心臓を一突きし、そしてその首を切り落とした。修復していく体を、さらに
「レノ……後悔することになるぞ。私が死んでも……他の五人の賢者がおまえを……」
言葉は、途中で途切れた。
そうして、ようやくクールノは……かつて黒曜の賢者だったものは、動きを止めた。
僕の勝利だ。クロエも、アウレリア王女も守ることができた。
クロエの拘束を解き、僕はその美しい顔を見つめる。クロエはすやすやと寝息を立てていて、傷一つ負っていない。
ともかく、クロエが無事で良かったと思う。もしこの従姉を守れなかったら、僕はレノ少年に顔向けできない。
それから、アウレリア王女のもとへと僕は向かう。
僕は王女の前に跪いた。それが王族に対する礼儀だったからだ。
この幼く美しい王女には、一部始終を見られてしまった。
アウレリアは驚きと尊敬の入り混じった表情で、きらきらとした青い瞳で僕を見つめている。
「レノに助けられたのは、二度目ですね。……あなたは……何者なのですか?」
「ただの魔術師ですよ、殿下」
僕は言って、アウレリア王女に……賢者エミリの子孫にそう微笑んだ。
【あとがき】
これで第一章完結です! ヒロインもどんどん増え、次章は不死の魔法を発明した賢者コレットも登場します。
日間ランキング上位に載れればと思いますので、☆☆☆とフォロ-よろしくお願いします! 続きを書こうという励みになります。
他にもハーレム・ラブコメファンタジーを投稿していく予定なので、作者フォローもしていただけるととても嬉しいです!
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