第41ミッション 襲撃

 2日目の夜、女性陣で集まって部屋で雑談していた。ほとんどは仕事の話か家庭の話だったが、彼女らの興味は里桜の恋人へと向いた。


「里桜ちゃんの彼氏って外国人なんでしょ?どんな感じなの~」


 七瀬にせがまれて里桜はリチャードの写真を見せる。マカロンの毛をカットしている時のものだ。


「やだ!イケメーン!」

「こんないい男どこで知り合ったのよ!」

「名前は?年齢は?職業は?」


 おば様達の質問攻めにたじろぐ里桜。根掘り葉掘り聞かれてどっと疲れてしまった。


「でも、良かったわね~。いい人そうで!里桜ちゃん、なーんか危なっかしいから、騙されているんじゃないかって心配だったのよ」

「そうよね~!入社当初に笠巻課長にしつこく食事に誘われていたわよね~。鼻の下伸ばして分かりやすかったわ~」

「あたしがガツンと言っといたからね!後から聞いたらホテルに誘われてたって言うし。ちゃんと断らないとダメよ!」

「そうよ~。何かあったら言いなさいね~」


 彼女達の小言とアドバイスに心強さを感じる。人間関係にトラブルしかない里桜だが、職場環境と同僚には恵まれていた。

 女子会を終えて部屋に戻った里桜。リチャードに電話しようかと思ったが、夜中なので遠慮した。お休みのスタンプを押して眠りにつく。



 大坂の港区に来ていたK。ここが調べる最後の場所になる。大坂港駅で降りて倉庫街へ向かう。倉庫内に侵入して段ボールを漁っていると、外の物音に気付いた。身を隠そうと棚から下りたが、ドアが開いた瞬間に銃声と弾丸が飛んでくる。急なことにKは身を隠す事が出来ずに、鉛玉が身体を抉る。2発、3発目は棚を倒して逃れる。そのまま別の出口へ向かうが、銃弾と怒声が追ってきていた。

 Kは迷わず倉庫を出て、その先にある水族館とショッピングモールの方向へ走った。選択肢は逃げるの1択だった。Kは武器は何も持っていない。確認できただけでも相手は5人。負傷した状態では返り討ちは無理だ。なら、人混みに紛れてやり過ごすしかない。

 奴等は何なんだ?ネイサンが取り引きしていたマフィアの連中か?だが、どうしてこの場所を知っているんだ。

 考え事をしながら走っていたために、人にぶつかってしまう。


「きゃっ!」

「すまない」


 ぶつかった相手の事を確認する事もなく、腹を押さえたまま走り続けるK。ショッピングモールを抜けて公園の前に逃げ込み、すぐにJに連絡を取る。幸いにも近くにいたため、事情を説明し車で回収して貰う事にした。橋の方へ歩こうとしたが、痛みで悶える。左脇腹に弾が一発食い込んでいる。位置的に臓器には当たっていないが、止血ができないから血は流れていく。息を整え、気力で歩こうとした瞬間だった。


「リチャード?」


 その声にKの血の気は引いた。確かにここは大坂で『彼女』がいる事も分かっていた。だが、よりにもよって、このタイミングで出会すなんて……、

 Kはゆっくりと後ろを振り返る。不安そうな顔をした里桜がそこに立っていた。


 ……『最悪』だ。


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