第12ミッション 拘束

 店内にいたのは行員が4人と客である俺と里桜の2人だけ。平日の閉店間際で人気がなく、シャッターを閉めても外からは怪しまれない。強盗犯は3人。一人は行員を脅してシャッターを下ろし、防犯カメラを切らせ、金庫に案内させていた。他の二人は俺達を並んで座らせて目隠しと手錠をしていく。手錠は安物とはいえ鍵がないと開かないものだ。意外と手が込んでいる。


 俺達を拘束するのは、恐らく逃走時間を稼ぐためだろう。手を塞がれた状態では通報できない。俺なら余裕で外せるし、2分で全員制圧できるが、他の者達に危害が及ぶのは避けたい。

 ここは一旦見逃して、後で彼らの細かい特徴を警察に話そう。覆面をしていても、目や鼻や骨格からでも人相は判る。後で似顔絵を描いて捜査協力をしておこう。俺は絵も上手い。


 金を強奪した犯人達は引き上げようもしたが、Kにとってこれまた予想外の事が起きる。


「お前ついてこい。人質として連れていく」


「きゃっ!」


 犯人の一人が隣にいた里桜を引っ張って連れていこうとした。


 なぁにぃっ!どうして里桜を連れていくんだ!ふざけるなっ!


「待ってくれ!彼女を連れていかないでくれ!頼む、人質なら俺が代わりになるから」


「黙ってろ!男なんて連れてっても楽しくねんだよ!」


 Kは腹を蹴られて床に伏せる。どうやらゲスな理由で里桜を連れていくらしい。人質に取られた者が無事で戻ってくる確率は低い。警察の介入を待っていられなくなった。


 いいだろう。お前達が里桜を巻き込むつもりなら、全員この場で捕り押さえてやろう。


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