第13ミッション 制圧
Kはボールペンの芯で手錠の鍵穴を弄り、手錠を外す。手錠を人がいない所へ投げ、音で相手の注意を引き付ける。一人が食い付きATMコーナーの所へ向かう。Kは音もなく近付き、銃を掴んで振り返った相手の顎を揺らす。気絶した男から銃を取り上げ、マガジンを抜いておいた。
異音に気付いたもう一人が近づいて来たので、駆け出して飛び上がりながら、膝で顔面を攻撃する。相手がのされている事を確認し、Kは裏口へ向かった。
裏口の駐車場へ飛び出たKは、ドアを開けた先に黒いバンが停まっているのを見つける。こちらに気付いた最後の一人が銃を向けてきた。
「うっ……動くなっ!」
銃口を突き付けられてもKは迷わず走り出す。その銃が『発砲できない』と知っているからだ。突き出された腕を掴んで、鳩尾に拳をめり込ませる。気を失った相手を受け止め床に寝かせる。
こいつが持っているはモデルガンだ。本物の
車の後部座席を見ると里桜が横たわっていた。ドアを開けて近付くと視界を遮られている里桜は抵抗した。いつの間にか猿ぐつわまでされている。
「里桜、大丈夫だ。俺だよ」
Kは優しく声をかけてアイマスクをとる。猿ぐつわも外して、手錠も外そうとしたが、鍵も道具も手元になかった。俺としたことが、手錠の鍵を探していなかった。
「リチャード?どうして……」
呆気にとられた表情をする里桜。Kは余計な説明はせずに里桜を抱きしめた。
「君が無事で良かった……」
里桜はKの腕の中で涙を滲ませる。緊張の糸が切れたのか体の力も抜けていく。後は行員を解放して警察へ連絡しよう。強盗犯は仲間割れの末に自滅した事にする。
幸い、防犯カメラも切られているし、目撃者もいない。少し乱暴なやり方だったが、里桜が巻き込まれなくて良かった。
今度からは『不運』だけでなく、『犯罪』にも気を張って先を読む事にしよう。
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