エージェントと強盗

第11ミッション 銀行強盗

 何故こんな事になるんだ。


 Kは里桜を抱えて目の前にいる男を警戒する。男は銃口を自分達に突き付けていた。H&K USPの自動拳銃オートマチック。覆面を被った男はどすのきいた声で店内の人達を脅す。


「大人しくしろ。騒いだり、妙な動きをしたら、撃つからな」


 どうして少し銀行に寄っただけで、強盗に巻き込まれるんだ!







 里桜とイタリアンで食事をする。星もついていない店だが、高級過ぎると里桜が気後れしてしまうから、今は控える。いずれは、ドレスコードをして一流レストランに来たいものだ。


「はははっ、それでお父さんは池に落ちてしまったのか?」


「そうなの。真冬なのにずぶ濡れになっちゃって、旅行中はずっと寝ていたわ」


「それは可哀想に……」


「『運がない』のは一子相伝なのかな。あなたと会った時もそうだったし……」


「俺はアンラッキーだとは思ってないよ。君に会えてラッキーだと思っている」


 里桜が照れて顔を伏せる。少しクサいかと思ったが、満更でもなさそうだ。






 ここ最近は要請がなく、諜報員としての仕事がなかった。だから、里桜をよく食事に誘っていた。お互い行きたい店を選んで食事を楽しむ。デート代は折半か奢り合うのがルールになってしまったので、お互いお金を出し合っている。

 俺は全部払ってあげてもいいんだが、里桜が気にするのでこのスタイルにしている。里桜がお金を下ろしたいからと銀行に寄った数分の間に、冒頭のような展開に巻き込まれてしまった。


 くそっ!こんなの予測できるか!電子マネーが主流になってきているこの時代に、現金を盗もうとするバカがいたとはな!


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