第10ミッション 何でもない日常を……

 イルカショーは光と水の演出が素晴らしく、里桜も楽しく見ていた。ダイナミックなイルカの演舞に魅せらせたり、音楽に合わせて手拍子したりと、飽きない演出だ。


 演目が終わってショップに向かう。里桜がイルカのキーホルダーを選んでいると、Jから電話が掛かってくる。里桜から離れてKは電話を取った。


「どうした……」


『前に捕まえた密売組織の拠点が割れた。今すぐマカオに来てくれ』


「分かった。6時間後には空港に着ける。後の指示は現地で聞く」


 通話を終えてKはネットでマカオ行きのチケットを購入する。この後、里桜を食事に誘いたかったが、諦めよう。

 買い物を終えた里桜と一緒に駅に向かう。別れ際に里桜がKにある物を渡す。それはクラゲのイラストがプリントされたプラスチック性のしおりだった。


「その、……前に服を買ってくれたお礼。さっきクラゲを見てたから、好きなのかなって思って……」


 彼女から贈り物をされるとは思っていなかった。宝物にしよう。


「ありがとう……、大切にするよ」


 里桜はにっこりと笑った。この平穏を……、何でもない日常を……守りたい。そう決意を固めKは空港へ向かった。



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