第9ミッション 平穏と悪事
2回目のデートは品川の水族館に行った。今日の里桜の服装は白いワンピースに生なりのカーディガン。前回より気合いが入っていて、とてもかわいいな。
今日は彼女の奢りというので、チケットを買った里桜と一緒に水族館へ入る。
まず最初に映像と組み合わせた水槽が登場する。とても幻想的で里桜も少しはしゃいでいた。こんな表情もするのだな。かわいい。
アクアジャングルやリトルパラダイスなどで、淡水魚や熱帯魚を楽しみ、トンネル状の水槽でマンタやエイが飛び交う様を眺めた。
一階にあるカフェで飲み物を飲みながら談笑する。今日の里桜はよく笑ってくれる。本当にどこにでもいる只のカップルのようで、心弾む時間だった。
*
イルカショーが始まる前に里桜がお手洗いに行った。待っている間、Kは周囲を見渡す。家族連れやカップル、老年の夫婦など、様々な人がいる。Kにはその光景が、額縁の中の風景のように見える時がある。
みんな、平穏な世界にいる。
この世界が平和で、紛争や犯罪などないように思える。だが、無差別な悪意というものはすぐ側にあるものだ。
テロや薬物の取引、人身売買、臓器の闇市……。どんなに社会が発展しても、目を光らせていても、悪事はなくならない。
Kはその場を離れてクラゲの鑑賞エリアに入る。イルカショーを見るためにみんな移動しているのか、誰もいなかった。
ならば、最悪な事態を想定して、それを事前に排除すればいい。『
「リチャード……」
里桜の声にKは引き戻される。『今だけ』は自分も『平穏な風景』の中にいよう。
「ショーが始まる。行こうか……」
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