第18ミッション 迷子
海辺へ走っていって周囲を見渡したが、里桜の姿が見えない。その周りを歩いて探したが見当たらず、元の場所にも戻ってこなかった。
俺も里桜もスマホはロッカーの中にあるから連絡が取れない。過度な心配かもしれないが、彼女の不幸体質を考えるとどうしても不安になる。
Kは海の家に行って放送で里桜の名前で呼び掛けをしてもらった。他にも迷子を探す両親がいて、二人の名前が海水浴場に響いたが、20分経っても誰も来なかった。
放送で呼び掛けても姿を現さないという事は、音波の届かない場所にいるということか?まさか!誰かに拐われて身動きが取れないんじゃ!最後に姿を見てからすでに一時間半経っている。仕方ない。使う予定はなかったが、『最終手段』に出よう。
※
「おねーちゃん、こっちであってるの?」
「う~ん……」
里桜は小さい男の子の手を引いて歩いていた。岩場を越えた辺りから迷っていると感じていたが、遠くに漁港が見えてきたので完全に海水浴場から離れている事が分かる。引き返そうとした時、遠くから声がした。
「里桜っ!」
振り向くとリチャードが走ってきた。里桜と少年の前で止まり、笑顔を見せる。
「見つかって良かった」
「リチャード、どうしてここに?」
「君の姿が見えないから探していたんだ」
「よくここが分かったね」
「いろんな人に話を聞いてきたんだよ」
これは嘘だ。本当は位置情報を辿ってここまで来た。彼女の髪ゴムに発信器を取り付けておいたから、GPSで居場所はまる分かりだった。
俺が髪型を変えるように言ったのは、ポニーテールが見たかっただけでなく、飾りの一つに発信器を付けたかったからだ。
人が多いから念のために付けただけだったが、役に立つとは思わなかった。用心して正解だったな。
Kは里桜と手を繋いでいる子供に微笑みかけながら、膝を折る。
「君はもしかして、『スズキルカ』君かな?」
「どうして、ぼくの名前知っているの?」
「さっき海の家でご両親が探していたよ。戻って二人を安心させてあげようか」
「うん!」
Kは男の子と手を繋ぎ、里桜と一緒に帰っていく。何はともあれ、事故や事件に巻き込まれていなくて安心した。迷子の親を一緒に探してあげるなど、なんて心優しいんだ。好きだ。
だが、彼女と離れてしまったのが今回の原因だ。今度は彼女と気兼ねなく泳げるように、皮膚移植の手術を受けることにしよう。
……………………………………………………
Kは下心丸出しなのに、何故か爽やかですね。皆さんはGPSで相手の行動を探ろうなんて、やめてくださいね。
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