第6ミッション 不運が降りかかろうと
「あっ、あの……今日はもう帰ります。服とか濡れちゃったし、これじゃ座れない……」
沈んだ顔の里桜が解散を提案してきた。汚水で服が濡れたのでは当然だ。けど、このままでは非常に『まずい』。まだ会って30分じゃ碌な会話もしていない。
このデートは、彼女にとっては『お詫び』という色が強い。義務で付き合わせている心情から、また会いたいと思わせなければならない。
恋愛には頻度が不可欠だ。
まだ知り合って間もない俺達が親密になるには、会う回数を増やさなければならない。回数と恋愛度が比例するならば、俺の場合は条件が悪い。
「里桜、時間があるのなら、まだ付き合ってもらえるか?」
「え?……どこへに?映画始まっちゃいますよ」
「映画は別の上映を見ればいい」
Kは里桜の手を引いて建物を出る。彼女をこのまま帰らせる事は出来ない。『俺』という人間を印象付けてない状態では、『次』に繋がらない。
Kは近くのデパートに入る。里桜の服装からして派手で尖ったブランドよりも、大衆的でフェミニンな洋服店のがいいだろう。良さそうな店に入りブラウスとスカートを選んで、試着室で着替えさせる。
七分袖の白いブラウスに膝下までのライトグリーンのスカート。里桜は手足が細くて綺麗だから、隠してしまうのはもったいない。
靴も歩きやすい物がいいだろう。高いヒールは歩き慣れていないように見えたから、3cmくらいのヒールか、もしくはスニーカーでも良いかもしれない。店員の人も勧めていたパンプスを買い、全身フルコーデした。
「あっ……あの、本当にいいんですか?服を買ってもらって……」
「ああ、その格好なら一緒に映画を観て貰えるだろうか」
「でも……私といると、良いことないと思う……」
どうやら彼女にとっては『不運』は日常茶飯時のようだ。Kは自信と共に彼女の手を取って、力強く言い放つ。
「大丈夫。君にどんな不運が降りかかろうと、俺が回避してみせるから……」
「えっ?」
俺の『先読み』の力を全て生かし、無事に映画館へ向かってみせる!
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