エージェントと初デート
第5ミッション 不幸体質
待ちに待った日が来た。
駅で待ち合わせて喫茶店に入った。グレーのブラウスにカーキー色のロングスカート。全体的に大人しい服装で派手ではない。
まずは世間話やお互いの事を少し話した。俺の方は名前や国籍や職業は全て嘘だが、『本当の仕事』の事を軽々しく話せる訳がない。
今日のデートプランとしては映画を見ることになっている。彼女が気になっているであろうタイトルを上げたら、狙い通り食い付いてきた。
映画館に向かおうと立ち上がった瞬間、Kは里桜の前にあったグラスを掴んだ。飲みかけのアイスティーが傾き倒れそうになったのだ。
「どうしたんですか?」
「ああ、いや……コップが倒れそうだったから……」
何故コップが傾いたんだ?俺も彼女もテーブルに触れていなかったのに、どうしてだ。
Kの一抹の不安は数分後には確信に変わった。
彼女と一緒に歩いていたら、次々と『不幸』が飛び込んできた。鳥に糞をかけられる。ヒールの脚が折れて転けそうになる。終いには汚水をかけられてスカートが濡れてしまった。
Kが庇う間もなく『不運』のオンパレードが里桜に降りかかる。
これは、間違いない。彼女は不幸体質なんだ。
間が悪く、引きが悪く、運が悪い。何もしていないのに不運に見舞われる。そういう人間だ。
よくよく考えれば、彼女との出会いもおかしかった。何でも先を読んで行動する俺が『人とぶつかったのだ』。自分から『わざと』ではなく、彼女の行動を全く予想できずに『ぶつかった』。『不運』という魔物が里桜にとり憑いているとしか考えれられない。
事前調査ではそんな事は浮き彫りにならなかった。やはり、会ってみないと見えてこないものもあるな。
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