第2話 想思考
雨が降っていた。梅雨入りをしたのだろうか。そういえばネットニュースで台風が近づいてると書いてあったような気もした。
どちらにせよ億劫だ。憂鬱な時だ。変わり映えしない日々を生きていく中で、人生とは実は無意味なものなんじゃないかと思ってしまった。きっとそんなことはないのだろうけど
廊下を元気に走り回る女の子がいた。無邪気な笑顔で生きている女の子を見て、きっとあの子は大人になったらモテるんだろうと思った。笑顔は無敵だ。どんな事があっても大抵は笑って誤魔化せる。なんて素晴らしいものなんだろう。
もうどのくらい笑ってないのかな。生きる為に必死に身につけた作り笑いというスキルを磨き上げた結果、あの女の子みたいな無邪気な笑顔は出せそうにもない。かな。
そういえば笑った顔が好きと言ってくれた人がいた。笑った時の顔しか好きじゃないのかと聞くと、あたふたしていた。照れ隠しなのか怒ったと思っているのか。その人は笑って「それだけじゃないよ」と答えた。
その人はいつも笑っていた。友人と話してる時、何かをしている時、出かけた時、さよならをした時も。変わらない笑顔が記憶に焼き付いた。そんなことを思い出す昼下がり。誰にも見つからないように雨と一緒に泣いた。
少し肌寒い夜。カーテンの隙間から雨の匂いがした。白い天井と壁には時計が飾ってあった。「時計が時を刻む。」 なんて少し大人びた事を口ずさんでみた。一秒。また一秒と時間が過ぎてゆく。未来の為に今があるなんて言われても信じられる訳もなく、今日も生きていた。
窓の外を眺めながら思う。この雨はいつになったら止むのだろうか。降り続ける雨に憂愁を感じさせた。
きっと空は泣いているのだろう。世界の隅っこで泣いているその人を一人ぼっちにはさせたくないと、優しい雨を降らしその人を包み込むのだろう。誰にも見つからず泣くその人を空だけは見守ってくれている。
貴方の生きる世界が優しい世界でありますように。
そう口ずさみ、窓から見える遠くの建物を見つめていた。
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