転生守銭奴女と卑屈貴族男の料理事情 01


細かく時系列決めてないですが、本編中盤以降。


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 昼食はまちまちだが、夕食はディルミックと一緒に食べることが多い。最初の頃こそ特に話すこともなく、沈黙が長い食事時間ではあったけれど、今ではちらほらと料理を食べながら会話を楽しむことができている。


 それにしても、ベルトーニの料理美味しいな。お菓子はともかく、村での食事は自炊していた日々だったから、わたしも料理ができるけれど、これだけ美味しいご飯が毎日出てくるのなら、もう、わざわざ料理しよう、なんて思わない。

 流石、貴族の厨房を預かる料理人なだけある――……ん?


「そういえば」


 わたしは、ふと、気が付いて食事の手を止める。


「ディルミックの部屋にキッチンの設備がありましたけど、ベルトーニに作ってもらわないんですか?」


 お茶を淹れるためにミニキッチンが欲しい、と言ったとき、ちらっと、ディルミックの部屋の中にもコンロがあるのを見せてもらった。あのときは何も不思議に思わなかったけど、よくよく考えたら、貴族なら料理人を雇うんだから、自分で料理する必要、ないよね? 現にこうして、ディルミックの料理はベルトーニらが用意しているんだから。


 マルルセーヌなら、貴族でもお茶を淹れるためにミニキッチンの設備が自室にあるのもおかしくはないだろうけど、ここはグラベインである。

 ディルミックが部屋にキッチンを用意する必要なんてないのでは、なんて思ったけれど――。


「ああ。ベルトーニとゼンシを雇ったのは、僕が家督を継いでからだからな。それまでは……自分で食事を用意していた。今はほとんど使っていない」


 ――なんて、答えが帰ってきた。

 ディルミックがこの別館に何歳からいるのか、具体的な年齢を聞いたことがない。でも、この感じだと、それなりに低い年齢のうちからここにいたのだろうか。


 ゼンシ、というのは、ベルトーニといつもセットでいる料理人のことだろう、多分。キッチンを借りるとき、ベルトーニとはよく話をするけれど、もう一人の料理人とは会話をしたことがないので、名前すら知らないが、話の流れからしてもう一人の料理人だと思って間違いはないだろう。

 彼が無口なのは、わたしが嫌、というよりは、多分、他人との交流自体が得意じゃないんだと思う。わたしどころか、ベルトーニと会話をしているところを見たことがない。流石に、わたしがいないところで仕事に必要な話はしていると思っているけど……。


 ……それにしても、料理ができるのか、ディルミック。それはなんというか……ちょっと、食べてみたいかも。ディルミックの手料理。

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