転生守銭奴女と卑屈貴族男の本館事情 19
「それで、あの子は貴女に一体いくら出したのかしら」
平民がお金につられて、悪い噂のある貴族に嫁入りする。
それはお義母様にとって、ようやく理解の追い付く真実だったのだろう。呆然とした様子がいくぶんか消え、逆に、刺々しい敵意のようなものが見え始めてきた。
「混金貨一枚? 十枚? まさか、純金貨、なんて言いませんわよね」
「じゅ、純銀貨五枚、です……」
正確に言ってしまうと、初夜の翌日に、純銀貨一枚貰っているので、純銀貨六枚、ということになるのかもしれないが、契約金は純銀貨五枚だったので、細かく訂正しなくていいか。後、普通にそういう話を人前でしたくない。ましてや、相手の親の前で。
「じゅ、純銀貨五枚……? たったの? それこそ嘘でしょう? そんなはした金で……」
わたしはお義母様の言葉にむっとした。純銀貨五枚はかなりの大金だぞ。わたしがあのままマルルセーヌにいたって、そんな金額を稼げたとは思えない。一生手に入らない金額なのだ、純銀貨五枚というのは。
「そんなことで今更嘘をつかなくてもよろしくてよ。純銀貨五枚なんて、平民でも稼げる金額でしょうに」
そ、そりゃあ人が売り買いされるには安い金額かもしれないけど、そんなに言わなくたっていいじゃないか! わたしはこの金額に納得したんだから。
……ま、まあ、本当は、ちょっとだけ、金額釣り上げられないかな、と当時のわたしも思っていたけども。
で、でも、他の富豪のとこからのお誘いでもう少し金額釣り上げようとしたら、じゃあいいって切られたんだもん! 純銀貨五枚の時点で一番の好条件だったのだ。絶対逃がしたくないって、そのまま受け入れた。……も、もしかしてこの反応、もう少しごねればもらえるお金、増えたんだろうか。
いや、今現在、わたしは十二分に幸せなので、後悔はしていないけど。仮に、今、別の家から純銀貨六枚以上の金額を提示されたところで絶対にここから出ていくつもりはない。
「それなら、ここに嫁いできてから、何か散財したのかしら。ドレス? 宝石? 何にお金を使ったの」
「え? ええと……ドレスは必要に応じて何着か。宝石は、ドレスに合わせて買ってもらったアクセサリーについていたくらいです」
王子の婚約パーティーと、結婚式を開く際に王城へ向かった際に着た数着のドレスは、どれも高そうだったから、それなりの金額はしたはず。わたしは具体的な金額を知らないけど。
でも、TPOというものがあるから、あれは必要経費だと思う。婚約パーティーはともかく、王城にいるときも、いつものワンピースじゃ駄目らしいし。
ちなみに、新婚旅行でマルルセーヌの王族に謁見した際は、結婚式前、王城に滞在していたときのものを使いまわしたので、新しく作ってはいない。
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