転生守銭奴女と卑屈貴族男のお土産事情 01

本編終了後から数年後。多分八年か九年後くらい。

この時点で、長男、次男、長女・三男(双子の姉弟)がいます。


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 わたしが鼻歌を歌いながらお茶の準備をしていると、後ろで「ご機嫌だな」というディルミックの声が聞こえてきた。人前で歌うことをあまりよしとしないわたしが鼻歌を歌うものだから、気になったのかもしれない。


「そりゃあ、勿論、久々のお茶会ですから」


 子供たちが生まれて数年。貴族らしく世話係がいるため、普通の育児よりはきっと楽なのだろうが、二人きりの時間はなかなか取れない。わたしが平民出身だからか、極力子供たちと一緒にいさせてもらえているからなおのこと。

 夜は二人で寝ているし、子供と一緒に生活することが苦だとか、そういうことは全くないけれど、二人きりのお茶会というのは、また特別なものだ。子供を誘ってお茶を飲むのはそれはそれで楽しいから好きなんだけど。


 二人きりの時間を積極的に作ろうとしてくれているディルミックではあるけれど、元より仕事で忙しい上に、子供も増えてきたので、思うよう時間を作れないのが現状だ。昔ほど仕事を詰めなくなったディルミックではあるけれど、仕事をこなして、家族としての時間も取った上で、さらに時間を捻出するのは難しいようだ。

 二人きりの時間を確保しようとしてくれているだけで嬉しいけれど、まあ、それは言ったら野暮ってものだよね。


 今日は三か月ぶりのお茶会だった。お茶もお茶請け菓子も、今日のために張り切って用意したものだ。

 しかし、わたしが用意したお茶を見ディルミックは、ピシッと固まってしまう。


「ろ、ロディナ、これは……」


「この間、ジェリクが茶器を欲しがったじゃないですか。あの子と茶器を店へ見に行ったときに、丁度マルルセーヌのフェアをやってたんです。つい、懐かしくていくつも買ってしまって……」


 ガラスのティーポットに入った工芸茶は、カノルヴァーレにある店で買ったものだ。

 子供たちの中でも、わたしに似たのか、マルルセーヌ人よろしくお茶に興味を示した三男のジェリクが「ぼくも、ぼくのお茶いれるやつが欲しい」と言い出したので、喜んで買いに行ったところ、マルルセーヌのフェアをやっていたので、いろいろ買い込んでしまったときの茶葉の一つがこれだ。

 工芸茶で、この間買ったガラスのティーポットで淹れたら映えるだろうな、と思って、今日のために買ったのだ。


 ――が。

 ディルミックの顔は、少し浮かない。工芸茶を出すのは初めてではないから、花が入っていることに違和感を覚えるとは思えないけど……。


 不思議に思っていると、ディルミックが恐るおそる、わたしに聞いてきた。


「この花は、こうして使うものなのか?」


「え? ああ、はい、マルルセーヌではよくある工芸茶ですけど……」


 言ってから、わたしは少し、後悔した。


「この花、僕が昔、ロディナに贈った花と同じ種類じゃないのか?」


 ――アッ。

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