転生守銭奴女と卑屈貴族男の風邪事情 01
モーニングティー~庭園解放日の間のどこか。
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朝日のまぶしさにまぶたが刺激されて、わたしは目を覚ます。あくびをかみ殺しながら伸びを一つ。
目覚ましのない生活でも、それなりに体が慣れているから、いつも大体同じ時間に起きれている。この世界にも一応目覚まし時計は存在しているし、庶民でも普通に買える値段ではあるのだが、別になくても生活できるから、と買わないでいた。必要ないのに買うなんて、お金がもったいない。
それは今でも変わりない。
少しまだ、寝ぼけている頭で起き上がろうとして――まだ、隣でディルミックが寝ていることに気が付く。珍しい。
たまに寝過ごすこともあるディルミックだが、基本的には彼の方が早起きだ。彼が寝過ごしたときくらいしか、わたしが先に起きることはないので、実際の彼の起床時間が何時かは知らない。でも、大体七時から八時の間に起きた頃には、もうベッドにディルミックのぬくもりはないので、五時とか、そのくらいに起きているのでは、と勝手に思っている。
そのディルミックが今日はまだ寝ている。
折角だから、久々にモーニングティーでも淹れようか、と思っていると――なんとなく、違和感を覚える。若干、眉をひそめ、随分と苦しそうな寝顔なのだ。パッと見た限りでは気が付かなかったけど、決して快眠状態、とは言えなそうである。
夢でうなされているのかな、と起こそうとして、彼の肩に触れたとき伝わる体温に、嫌な予感がした。
「――……失礼しますね」
寝ているであろうから、聞こえているか分からないが、わたしは一応断ってからディルミックの首元にふれた。
「……熱い、かも? 熱があるのかな」
わたしは自分の首も触ってみて確認する。ディルミックを触っただけでは分かりにくかったが、自分と比べて触ってみると、その違いがよくわかる。
これ、確実に熱あるね。風邪かな……。
「――げほっ」
咳を一つし、寒そうに肩をすくめたディルミックを見て、わたしは慌ててベッドから出て、毛布を彼の肩ぎりぎりまで被せる。
うん、どう見ても体調不良だよね。
わたしは極力音を立たせずに、そっと部屋を出て、急いで着替えてミルリのところへ行き、ペルタさんとバジーさんを呼んできてもらった。朝っぱらから呼ばれたにも関わらず、二人はすぐに来てくれた。カノルーヴァ家お抱えの治癒師と医者だから、当然と言えば当然なのかもしれないが、本当にあっという間に本館から来てくれたのだ。
そして、診察をしたバジーさんが一言。
「これは、普通の風邪ッスね」
予想通りの言葉。ペルタさんはぐったりとしているディルミックに、「しっかり寝て治してくださいね、旦那様」と声をかけていた。
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