依願退職の謎

浦賀千賀子の退職について露骨に尋ねようにもプライバシーの壁がある。そこで成田五郎はもう一芝居打つことにした。千賀子に紹介状を書かせたのだ。

実際に彼の慢性酸素欠乏症は深刻で精密検査と入院加療が必要だ。

口達者な黒子が芝居がかったしぐさで宗一郎と五郎の顧客を超えた友情、五郎の思慕、彼を失った悲しみ。そして酸素欠乏症を克服して彼に報いたいという熱意、千賀子先生に巡り合えた出会いの軌跡と元上司に対する感謝を情緒たっぷりに代弁した。

「あの～、どういうことですか？」

フロアリーダーの上田前野介は困惑気味に言った。

「僕、病院の医者じゃないわ。ただ仕事を紹介しているだけ」


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