第15話
☆☆☆
家に帰ってから一人でも、今回は強い寂しさは感じなかった。
お祖父ちゃんはきっともうすぐこの家に戻ってくる。
そう考えた途端、掃除をしておかなきゃ! という気持ちに駆られた。
お祖父ちゃんは奇麗好きだから、入院中ずっと掃除をしていなかったとバレたらきっと怒られてしまう。
そう思うといてもたってもいられなくて、すぐに掃除機をかけ始めた。
リビングもキッチンも廊下もくまなく掃除する。
ふと祖父の部屋の前で立り止まったが、そこはスルーしておくことにした。
着替えを取りに入ったことは仕方なかったけれど、掃除までされたくはないと考えたからだ。
そもそも、祖父の部屋はあたしの部屋よりもよほど奇麗だ。
部屋の掃除を一通り終えてホッとしていたところ、普段はあまり使わないスマホが光っていることに気がついた。
家の中でワイハイに繋がれている時だけ使用できるように、祖父が設定している。
画面を確認してみると、由香里と蒔絵から沢山のメッセージが来ていた。
《由香里:お祖父ちゃんの様子はどう?》
《蒔絵:落ち込むこと多いかもしれないけど、あんまり考えすぎないように!》
今日試験ができなかったことを考慮して、こんなメッセージをくれたみたいだ。
2人の優しさに心が温かくなるのを感じる。
2人へ向けて礼と、祖父の容態を簡単に記入して送信する。
するとすぐに返信が来た。
「もう、どれだけ早いの」
呆れながら画面を見た瞬間、心臓がドクンッとはねた。
それは由香里からでも蒔絵からでもなく、浩太からのメッセージだったのだ。
《浩太:大丈夫か?》
とても短い文面だけど、心臓が跳ねている。
《敦子:大丈夫だよ。お祖父ちゃん、目が覚めたから》
《浩太:そっか、よかったな!》
《敦子:心配してくれてありがとう》
《浩太:ほんと、心配で近くまで来たんだけど》
その文面にあたしは目を丸くした。
「近くまで来たって、まさか近所にいるってこと!?」
そばにいない相手へ向けて焦りの質問をする。
しかし、当然返事が聞こえてくるはずがない。
あたしはスマホを右手持ったまま、どう返事をしようかと部屋の中をグルグル歩きまわる。
《浩太:今から行ってもいい?》
「ひゃっ!」
浩太からのメッセージに体がカッと熱くなるのを感じた。
そうだよね。
近くまで来てるんだったら、そうなるよね!?
だけど浩太を家に上げるのは小学生以来になる。
今はもうお互い中学生だし。
しかも今はお祖父ちゃんがいないのだ。
あたしは浩太のことが好きだし……。
そう、一番の問題はそこだった。
あたしは浩太のことが好きだから、どうしても意識してしまうのだ。
2人きりなるとどんな会話をしていいかわからなくなってしまう。
だけど、これ以上返事を待たせるわけにもいかなくて、焦りは増していく。
その時だった。
玄関のチャイムが鳴ったのだ。
驚いたあたしは「ひゃっ!?」と一度飛び上り、慌てて玄関へと走った。
「はい……?」
鍵を開ける前に声をかける。
「敦子? 俺、浩太だけど」
その声に心臓が飛び跳ねた。
「こ、浩太!?」
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