第14話

☆☆☆


そんなあたしの気持ちが伝わったのか、病院へ伯母さんと2人で病院へ行って20分ほど経過したとき、祖父が微かに目を開けたのだ。



「お祖父ちゃん!?」



思わずベッドにすがりつき、名前を呼ぶ。



お祖父ちゃんはあたしの声に反応するように薄目を開けた。



「敦子……」



それは声になっていなかった。



けれど、確かにお祖父ちゃんの口はあたしの名前に動いたのだ。



それを見た瞬間熱いものがこみ上げてきて涙があふれた。



あたしはお祖父ちゃんの手を握り締めて「そうだよ、敦子だよ!」と、返事をする。



その間に伯母さんが担当医を呼びに行ってくれた。



祖父はその後少し目を開けていたけれど、またすぐに眠ってしまった。



点滴の影響が出ているのだと言う。



担当医の表情は明るく「もう心配ないですよ」と、優しく言ってくれた。



安堵すると同時に気が抜けたあたしは、その場でまた泣いてしまったのだった。

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