第3話

大袈裟なその様子に思わず笑ってしまう。



「蒔絵を好きな男子は沢山いるけど、蒔絵が相手を好きにならないんだもんね」



由香里の言葉に今度はうなだれている。



「だって、好きとかよくわかんないんだもん」



「胸がギュッと苦しくなるとか、その人のことをジッと見ちゃうとか」



あたしの言葉に蒔絵は首をかしげた。



本当にわからないみたいだ。



「由香里はその人に告白とかするの?」



気を取り直して質問すると、由香里は驚いたように目を見開き、それから真っ赤になってしまった。



「なになに!? 告白するの!?」



蒔絵が一瞬にして元気を取り戻し、がっつくようにして質問する。



「ま、まだわからないよ? でも、今度の週末2人で勉強することになったの」



真っ赤な顔でうつむき、モジモジと答える由香里はまさに恋する乙女だ。



女のあたしでさえ可愛いと思う。



「そっかー! じゃあ、その時が勝負?」



「そ、それはまだわからないってば!」



蒔絵の言葉に由香里は慌てている。



あたしはそんな2人を尻目に、浩太へ視線を向けた。



友人らとふざけ合って騒いでいる姿に胸がキュンッと鳴る。



浩太に告白できたら。



一緒に受験勉強を頑張れたらどれだけいいだろう……。



そんな、甘い幻想を抱いたのだった。

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