第六話④ 遅い気がした、でも行けるだけ
『……はい。もしもし? すいませんけど、ランバージャックさんなら今は……』
「……ランバージャックです。スラおばさん、申し訳ありませんが一つ頼みたいことが……」
『……えっ?』
そうして、私はスラおばさんに事情を伝えました。加えて、お願いしたいことも。
『……あっはっはっはッ!』
話を聞いた後の彼女は、笑いました。
『良いよ良いよッ! 手伝ってあげるよッ! 全く、そんな言い訳がなきゃ動けないなんて、アンタって本当に馬鹿なんだから……』
「……そこまで言いますか?」
『何度でも言ってあげるよ、この面倒くさい大馬鹿者。そしてお願いの方も、任せておきな……かつての掃除屋だったあたしの力で良ければ、いくらでも貸してあげるからね』
「……ありがとうございます」
そうしてもう少しだけ細かい内容を打ち合わせた後、私はタブレットを耳から話して通話を切りました。これで一人目はオッケーです。次は彼ですね。再度タブレットのタッチスクリーンを指で動かし、連絡先を探し出します。
『……どうしたランバージャック、忘れもんか?』
「……はい。トシミツ、あなたに一つ、お願いすることを忘れておりまして」
『……はあ?』
次に連絡した彼にも事情を話しました。忙しい彼ですので、流石に無理かともの思いましたが、
『わかった、何とかして予定を開けてやる』
何故か、かなり力強い言葉を頂きました。
「……良いんですか?」
『おうッ! なんだなんだ、気に入らないならさっさとやれば良いのに……お前ホント面倒くさい奴だなぁ……』
「……面倒くさいとは、失礼な。私は面倒事が嫌いなんですよ?」
『はっはっはっはッ! そりゃ最高の冗談だッ!』
快活よく、トシミツは笑っていました。
『……オレの予定は気にすんな。何としてでも空けてやっからよ。お前こそ、準備からしてしくじるんじゃねーぞ?』
「……解っています。本当に、ありがとうございます」
『おうよッ!』
そうして彼との通話を終えました。これで二人を確保完了です。最後に連絡するのは彼女の所です。
『……はい。こちらステーションのドア予約担当ですねー』
「……ランバージャックです。急ぎでドアの予約をしたいのですが……」
『……あら、ランバージャックさんじゃないですかねー。急ぎとなると、少々厳しいかもしれませんねー。一体、どちらの世界をご希望ですかねー?』
行き先の世界と時代を、そして私がこうしたいのですという事情を伝えると、ねーねーさんの態度が変わりました。
『……承知しましたねー。私の方で急いで手配いたしますので、少々お待ちくださいねー』
「……よろしいんですか?」
あっさりとオッケーを出してくれた彼女。流石にここは待たされると思っていたのですが。
『はい、良いですねー。本当に、面倒くさくて可愛い方ですねー』
ねーねーさんも含めてお三方全員に面倒くさいと言われるとは、これは如何に。
『貴方がそれを選んだのであれば、私もできる限りのお手伝いをしたいのですよねー。だいたい、リッチさんも様子がおかしかったですからねー……ああ、あと別にこれくらいでしたら怒られることもありませんので、気にしなくても大丈夫ですねー』
「……わかりました。ありがとうございます」
『でもお一つ、約束はしていただきたいですねー』
約束、ですか。一体、なんの……?
『そう決めたのなら、必ずお二人で帰ってきてくださいねー。私もまた、あの子の顔が見たいんですよねー』
「……わかりました」
それくらいなら、私でも守れそうです。何せ今の私は、珍しくやる気ですので。また予約が取れたら連絡しますねー、と言っていただけたねーねーさんとの通話を終えた後。私は事務所兼住宅を目指して歩き出しました。
おそらくは、戦闘が予想されるでしょう。
ええ、私は面倒くさいのかもしれません。理由がなければ、動き出すことも出来なかったのですから。それでも、そうしたいと口に出来たのなら、そうさせていただきましょう。
『ぼくは変わってなんかない』
ふと、夢で聞いた幼い私の言葉が頭をよぎります。もしかして私は、昔からこうだったのでしょうか。心の中に、安堵したかのような気持ちがこみ上げてきます。
「…………」
私は湧き上がった思いを鼻で笑うと、足早に帰路へとつきました。
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