リルのこと・その2

 さて、そうして「ちょっとやな端役」から重要人物に昇格したリルですが、最初の性格は予定の「やな悪役令嬢」っぽいところからあまり変わってはいません。

 

 あることからそれまで何もかも自分の思う通りになってる、自分の進む道は順風満帆じゅんぷうまんぱん、に近い考えだったリルが、どうやっても叶わないことがあり、やはり、


「お父様に言いつけて思う通りにしてもらう。それが叶わない時には……」


 と、考えてしまうのですが、そこを「黒のシャンタル」に救われたことから目覚め、みるみる変わっていきます。


 というか、本来はそういう子だったんだと思いますが、なまじ家が大金持ちで、自分も色々な才能に恵まれて自信満々だったことから、希望が叶わないということがなかったので傲慢になっていたんでしょうね。小さい時に希望した「侍女になりたい」という望みも、親の力でなんとか叶っていることから、その失敗は「なかったこと」として封印していましたし。


 本来はとても素直な明るくて活発なお嬢さんに戻ってみると、とてもいい子で、ミーヤとも深く心を通わすようになり、後に「侍女に必要な資質」を目覚めさせ、立派な侍女と言ってもらうほどに成長していきます。


 と、ここまでは八年前の出来事、第一部の出来事ですが、第二部でトーヤたちがシャンタリオに戻ってみると、リルの身の上は驚くほど変わっています。まだお読みいただいていない方のためにお口チャックですが、まあ、なんといいますか、うん、意地悪な悪役令嬢とは全然違うキャラになっていますので、よろしければ本編でリルの変化も楽しんでいただけるとうれしいです。


 こうして思い返してみると、あの時によくあるいじわるなお嬢さんにしてしまわなくて本当によかったな、と思っています。なかなか味のあるキャラが描けてるんではないかと、お気に入りキャラの一人です。


「お気に入りじゃねえよ! その分、俺がどんだけえらい目に合ってるか!」


 って、こちらも久しぶりに創作ノートに登場した主人公らしき人が抗議してきてますが、最初にリルにしてやったりと思ってただけに、そのしっぺ返しがきっついねえ、トーヤ君。


「きっついねえじゃねえ!」


 と、まだ文句言いたそうですが、


「あら、でも私はちゃんとトーヤの役に立っているのではなくて? そんなこと言うのなら、あれもこれもなかったことにしてあげてもいいんだけど? どうする?」

「あ、あ、嘘です! 助かってます!」

 

 な? だからあれでよかったのよ、リル。


 と、トーヤが頭が上がらないキャラになってますので、どうぞご一読ください。

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