サブカルギルド 6 食事
「あのうどん屋さん美味しかったね!また食べに来ようよ!」
光里はとても満足そうに言う。
「そうだね。うどんも天ぷらも美味しかったから、俺もまた来たいな。」
二人で絶賛しながら帰路につく。お腹が膨れて満足なので、ほかのことを考えていなかったのだ。
駅前まで歩いてからふと思い出す。
「「あ、食材買ってない・・・。」」
愉快に話し合いながら歩いていたので、しばらく顔を合わせてから、二人で後ろを向く。
「「よし、買い物に行こうか。」」
何もなかった。別に何かを忘れてたりなどしなかった。
スーパーはそこそこ大きいが、少し日が傾いてきていて、奥様方がたくさん買い物をしているところだった。
正直、二人してあまり乗り気にはなれなかった。
「まぁ仕方ない!頑張って進むよ!広くん!」
明らかに空元気なんだろう。と思っていたのだが、その顔は思いのほかわくわくとしていた。
「うん、分かった。付いていくよ。」
そう返し、カートを取りに行った。
しばらくの間、たくさんの奥様方などなどにもみくちゃにされながら買い物をすること約一時間。やっとの思いで並んだレジには、はやりたくさんの人たちが列をなしている。
「うわぁ、結構かかりそうだねぇ。店員さんも大変だねぇ。」
「ほんと優しいよな。ほとんどの人は『早く進まないかなー』って思ってるだろうに。」
「だって・・・大変そうじゃん。」
なんていえばいいのかわからなかったからか、少し恥ずかしそうに言った。
「言われてみればそうだな。こういった時間帯だけ給料が高かったりするのかな?」
「あー、そうだったらいいね。」
なんだか納得した様子だった。
「ほかにも、人数増やしてすぐに交代できるようになってるとか?」
「いいねぇ~。」
そんな感じで、ふわふわと適当な考えを言い合っていたら順番が来た。
対応してくれている店員さんは名札に『研修中』の文字を貼っていて、正社員なのかパートなのかはわからないが、新人なのはわかる。よく見ると少し涙目になっていて、どうして新人にこんな時間を・・・なんて思ってしまう。
「あっ、ごめんなさいごめんなさい!」
「大丈夫ですよ。ゆっくりお願いします。」
バーコードを読ませようとしたらお菓子を落としたらしい。・・・いつの間にお菓子なんて入ってたんだ?怪しんだ顔の俺を怒ってると勘違いしたのか、こちらを向いてもう一度謝ってくる。
「怒ってませんよ。ゆっくりで大丈夫ですよ。」
と、笑顔で言ったものの、笑顔で言えてたのだろうか。とりあえず小声で光里に聞く。
「いつの間にお菓子なんて入れたんだ・・・。」
「へへへ・・・食べたくなっちゃって。」
可愛いな。こんなの許すしかないだろ。
「・・・俺の分ある?」
「もちろん!」
親子か孫か兄弟か・・・。どれでもないけど。
自分たちの分の会計は終わって、研修さんは次の人のかごをあさる。並んでいる人はどの人も優しそうな人たちなのでひとまず安心だ。
「広くん。結構買っちゃったね。」
「そうだなぁ、長く外に出なくなっちゃうからな。買い貯めておかないと。」
「冬眠前のリスみたいだね。」
「寒くても暑くても外には出たくないだろ。」
「でもこの量、ちゃんと持って帰れるかな?」
「何とかなるよ・・・。何とかするしかないけど。」
グダグダ言いながら、カゴからビニール袋とマイバックに詰め込んで、カゴをしまって外に向かう。予想以上に重い。
「広くんに結構持ってもらったけど大丈夫?もう少し持てるけど・・・。」
「いや、大丈夫。持たせて。」
男としての面目も保たせて。
電車は都心からの延長線上に来ているため、本数が結構な数あり、電車の時間を見なくても大体の時間乗ることができる。早いときは5分に一本来る。
「あと15分・・・。運がなかったね・・・。」
「そうだね。まぁ、頑張るよ。」
今までは一人分をちょこちょこ買う事ばかりだったのだが、二人分となると重量が違う。責任も違う。とはいえ、光里と話していればあっという間だ。いつの間にか電車が着て、電車の座席に乗れr・・・。混んでいた。
「そっか、さっきまで電車が無かったし、時間的にも帰宅ラッシュに近いんだ・・・。」
光里が冷静に解説している中、俺は卵が割れないように必死である。どうして今日に限って卵が一人一パック限定で安くなってるんだ・・・!(二パック買った)
そんなことがあっても電車は進む。進むという事は時間が解決する。というわけで、あっという間に寮についた。正直、寮内のエレベーターに乗ってる最中もきつかったが、もう過去のことだ。
「広くんお疲れ様。私の分までありがとうね。」
その言葉だけで体が休まる。
「どういたしまして。って言っても、俺も普段からいろいろお世話になってるから、これくらい当然だよ。」
「それなら私だって・・・。きりがなさそうだね、これ。」
そんな照れながら言うの可愛すぎるだろぉ‼
「それもそうだな。それじゃ、いい時間だし夕飯にするか。」
「そうだね。せっかくだからポトフにする?」
「ポトフの材料だけ特に多く買ったからな。せっかくだからポトフにしよっか。」
というわけで、またまた二人でポトフを作る。圧力鍋がコトコト鳴ったり、泡を吹いたり、刃がまな板に落ちる音がしたり、やけに手際よくあっさりとできてしまった。
「意外と早くできたね。」
「広くんとだからだね。」
あぁもうずるい。
「それじゃ食べよっか。」
日はとっくに落ちていて、どんどん深くなる夜と寒さ。
弾んだ会話のせいか、はたまたポトフの温度のせいか、随分と温かかった気がする。
「おなか一杯になったことだし、今日もがんばろっか!」
「おー」
誰も知らないキャラクターの旅が再開される。
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