第9話 心筋梗塞

1年生の3学期は全く学校へ行っていなかったが、新学年になり、体調の良い時は週2回ほど午後から学校へ行くようになった。

 「あおはるをあきらめたくない。」

 「アオハル?」

 「青春ってこと。」


そうか。あきらめたくないんだ。


 体調の悪さは相変わらず。電車に乗って学校に行ける状態じゃないのは見ていてわかる。仕事と娘のサポートのバランスをどうとるのか悩んだ。

 幸いなことに、私の業界は土日も仕事がある。土日に出勤する代わり、平日に休みをとるという選択をした。だが、土日を完全に仕事にすると、平日にしかできない仕事は全く片付かない。それでも、娘の体調が良い時にできるだけ学校へ行けるようなサポート体制をとりたいという思いが強かった。

 週に1回程度だけど、お昼から登校し、部活、ホームルーム、授業と少しずつ、同級生の中に入れるようになっていった。

 下校は電車に乗って帰れるようになっていった。ちょっとは何かが進展していると思えるようになったある日、母から携帯に電話が入る。

「何か変。胸が、胸が‥‥。」仕事中にも関わらず、実母のもとに飛んで帰る。私は、数十分後には救急車に乗っていた。搬送が少し遅れていたら、天国に召されていたらしい。


この日から仕事と娘のサポートに、入院中の母のケアが始まる。繁忙期に入っている仕事。帰宅後に母の衣類の洗濯、入院先への差し入れ、病状説明。入院者が一人出ると、日常のくらしに、仕事が追加される。

この頃の娘は週2回程度午後から学校へ行けていたため、そのサポートもしていたので目まぐるしい日々を送っていた。少し調子がよかったので、娘を散歩に連れ出したりしていたものだから、私の心と体は少しづつ蝕まれていくような感じがした。

母が救急搬送される直前には、私自身が朝が辛く、下の娘の登校の送り出しすらできない状況に陥っていた。




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