第4話 思いやり

 眠れない娘。スマホが心の支え。それは、悪夢が怖かったから。

 小学校時代の悪夢にうなされ、眠れない日々が続いていた。スマホとの距離の取り方で親子でもめた。


 スマホにのめりこむのは悪いことだと知っているけど私の心の支えだったと言われた。心の支えになれなかった私。


 そんな時、姑が突然電車に乗ってやってきた。姑は認知症の初期症状が出ている。一通りの妄想を話した後、泊めてほしいと。

 翌日仕事を午前中急遽休むことにし、自宅まで送っていくことにした。娘は学校に行けていないことをおばあちゃんには言いたくないらしい。


 翌朝学校へ行く準備をする娘。それはおばあちゃんに心配をかけたくないという、思いやりからだった。かなり頑張って起きるが時間は8時30分。通常なら学校へ行っている時間帯。今から思うと、それでもこの時は、この時間帯に起きることが出来ていた。


 そんな娘の様子に気が付いた姑。

 「あの子、学校へ行くのは嫌なの?あの子のこと昔から心配だった。本人も辛いけど、お母さんも辛いわ。」

 私は、心配をかけまいと、

 「大丈夫だから、大丈夫だから。」と連呼するだけ。


 認知症になり、自身も忘れていく記憶の辛さを感じている中、私への優しい気づかいの言葉。そんな思いやりに涙が出た。

 

 この言葉で、今までのわだかまりが解けていくのが分かった。

 ちぐはぐな状態だけど思いやりの心はみんな残っている。きっと乗り越えていけると感じた。


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る