第2話 ディスタンス

 辛うじて、小学校の卒業式は開催されることになった。お話する友達もいず、身の置き所がない様子。家に遊びに来ていたお友達とも一緒に写真のフレームにおさまることすらおびえているような状態。

 卒業式当日にようやく娘の身に起きていた異常な状態を実感した鈍い私。「クラス内、全員に無視されていたのでは。」「じゃあなぜ、我が家にはクラスメイトも含めた同級生が毎週決まった曜日に遊びに来ていたのか。」

 訳が分からなかった。


 それでも環境が変われば、新しい人間関係ができると信じて疑っていない私がいた。その時には娘の心はすでに重傷を負っていたのに気が付いていなかった。


 中学校の新しい制服に袖を通しても晴れやかな顔をしていない。入学式に参加するけど浮かない表情。それは、世の中が新しい感染症におびえ人との距離をとって生活をしているせいだと思っていた。

 入学式が始まっても、休校状態が続いた。

 オンライン授業や、時差登校など徐々に社会生活が始まっていく。私たち夫婦は仕事があるため、時差登校のサポートができないので、おばあちゃんに頼っていた。

 登校するたびに、楽しみにしていた行事中止のお知らせ。娘も同級生とどうしたらお友達ができるのか必死で模索していた。下校の時もお話しできる友達ができ「楽しい!」と言っていた。そんな「楽しい!」と言っていた矢先、突然学校に行けなくなってしまった。ディスタンスをとったのだ。


 私はというと、何もかもわけが分からない。心の頼りは、学校内のカウンセリングだけだった。


 でもまだ、この時は、お寝坊な眠り姫程度だった。ただ私はどんどんと茨の森に包まれる状態に陥っていった。

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