第6話


乱暴にスニーカーを履き、外に出てしまった

であろうユナを追いかけた。


ユナは一心不乱に東の方に駆け出してしまっており、周りも見えていないのか、

歩行者にぶつかりそうになってた。


「あ、危ねぇな、、!ったくよぉ...」


俺の方が男だし。

足は早い。


持っていた紙袋はやや邪魔だが、

追いていく訳にもいかないし、、


と思って左胸に抱えて走った。


やがて、追いつき、

俺はユナの肩に手をかけた。


「これはさ、折角作ったチョコケーキはさ。俺が食べるから、、!ちゃんと食べるから!!」


でかい声でユナの背中に向かってそう叫んでいた。


ユナはこちらを振り向き、

ワンワン泣いてて。


俺は更に慌てふためき、

ポケットに入れてたまだ、洗い立ての状態でまだ俺の手とか拭いてない未使用できれいな

ハンドタオルを手渡した。


「な、涙、拭けばいいんじゃねぇのか。

これで!」


「うっ...ひっく...」


声にならない声を出して。


ユナのやつは俺からタオルを受け取り、

分厚いビン底眼鏡を取った。


その瞬間だった。


帽子を被ったおしゃれなスーツ姿の男が。


駆け寄ってきたんだ。


勿論、俺は驚き。


ユナも驚いていた。


何故かって?


そのスーツ姿の男の人は帽子を取って見せたんだけど、どこかで見たことがあって、、、


俺の記憶を辿るに、

テレビで見た事があった。



芸能事務所の社長だった。

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