Memory

神代雪津

memory

僕はすべてがどうでもよくなっていた

勉強や将来、友情や友人、

生きることも死ぬこともなにもかもが


そんな僕に大切な人できた


彼女は笑顔の耐えない人だった

周りのみんなはそんな彼女を好いていた

僕は正直彼女のことなんてどうでもよかったから

気にも留めていなかった


どしゃ降りのなか、雨に濡れる彼女をみるまでは


彼女は僕に気が付くと


「死にたいの」


そう一言つぶやいた

寂しそうで心から笑うような笑顔で

だから僕は一言だけかえした


「じゃあ、一緒に死なないか」


この日から彼女との幸せな日々がはじまった



彼女はもういやなのだそうだ

生きることも耐えることも


僕は彼女の願いを叶えたくなった

それが罪だと知りながら

そして僕も死のうと思った

彼女と共に最後を迎えたかった


それからは毎日が

いままでよりも明るくなった


彼女と一緒にいれることへの幸福感

終わりがあることへの安心感

彼女と共に終わりを迎えたいという願い


それらが僕を明るくさせたのだろう


それから彼女がやっておきたいことを手伝った

行きたい場所に行ったり、

食べたいものを食べたり、

そうして月日がたっていった


僕達が最初に決めた終わりの日が近づいていた



終わりの日が近づくと怖くなるのかと思っていたが、間違いだったようだ

終わりの日があるからこそ生きれるのだと知った

それが例え明日であったとしても


明日は素敵な日になるだろう



僕達は最初に決めた場所へきていた


「ありがとう」


そういって彼女は微笑む


「こちらこそ」


僕もきっと笑っていただろう

彼女との最後の会話だった


この選択が正しいかなんてどうでもよかった

僕達は手を繋ぎ、色鮮やかな空へと身を投げた




これは僕の記憶。

生きながらえてしまった僕の。

幸せな日々の記憶。


もう彼女はいない。

僕も歩けなくなってしまった。

一度きりの人生を僕達はどういきればよかったのだろう。


ただひとつだけ

少しの時間であったとしても幸せをくれた彼女に


「ありがとう」

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Memory 神代雪津 @setu_kamisiro

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