娘が野良戦艦を拾ったんだけど。

トクルル

第1話

ある日、帰宅するとリビングに戦艦が居た。


50㎝程の船体の、まだまだ子供のサイズだ。


8歳になる娘の佳子が背中にその戦艦を隠して居るけれど、飛び出した艦首を隠しきれていない。


何事かと妻に視線で訴える。


妻は頬に手をやりながら困ったように言った。


「近くの用水路にね、この間の大雨で迷い混んじゃったみたいなの。それで、水が引いて座礁してるのを佳子が助けたんだけど…家で飼うって聞かなくて…」


「パパ…飼っちゃダメ?」


娘が上目遣いで、おねだりをしてくる。

正直なところ、それだけでもう許可を出したくなるが、如何せん俺は戦艦の飼い方なんて知らない。なのでここは正直に。


「佳子…パパは、戦艦の飼い方知らないんだ。パパと一緒にお家で飼えるか、調べてみよう。」


娘のお願いには勝てないが、出来ないことは出来ないので前向きに検討。

いや、この言い方だと娘が期待しまくってしまうのでほぼ決定みたいなものだけど。

もし個人で飼えない様だと、娘は暫く口も聞いてくれないかもしれない。


「ちょっと、アナタ、良いの?」


「まぁ、命の大切さを知る良い機会だろうし、良いんじゃないかな?佳子、とりあえずその子はお風呂に浮かべてあげよう。」


「うんっ!!」




その後、家族三人パソコンの前で色々調べる。

戦艦はペットして飼うには余りメジャーではない…メジャーではないが、飼えるものらしい。

寿命は非常に長く、個体によっては100年以上生きるらしい。

主に食べる物は油…サラダ油でも工業用の鉱物油でもとにかく油と付くなら何でもOKらしい。

他にも、専用の火薬をあげると喜んで射撃演習をする様だ。因みに、その火薬はペットショップで売ってるのだとか。

暑さや、寒さについては全く影響を受けない。

小さい内は水槽で飼うことも出来る。

野生の個体であっても、非常に人になつきやすい。

因みに色んな種類の戦艦が居て、佳子が拾ってきたのは、扶桑という種類だとか。


ここまで見ると、戦艦という生き物は非常にペットとして飼いやすい様に思える。


だが…


「うーん、やっぱりサイズが問題かなぁ。」


でかくなる。でかくなりすぎる。


成体で300mを越えたりするのは、さすがになぁ。


「パパ、300メートルってどれくらい??」


「ええっと…」


はて、何と答えよう。

単純に長さを答えるなら、東京タワー位とでも言えば良いのだろうが…それだと、戦艦のスケール感は伝わらないだろう…というか、戦艦スケール感とか、俺にも分からない。

とりあえず、ネットで画像検索を…


「う、うーん。」


大体の画像が海の上を元気に泳いでいる物の為、やっぱり分からない。


何処か、本物の戦艦を見られる所は無いものか…


え?近くの水族館に居るの?ショーもやってる??


「佳子、明日お休みだし、水族館行こっか。」


「えっホント?おっきい戦艦さん見れるの!?」


「見れるみたいだ。居るのはダンケルクって種類のだん太郎君だって。」


「ふーちゃんとは違うんだね!」


ははっ、佳子、名前着けちゃったか。


「アナタ、ここの水族館、軍艦ならペット同伴OKみたいよ?」


妻も、何だかんだ飼うのに乗り気の様だ。


そういえば、軍艦用のキャリーバッグ何かもペットショップに売ってるんだったか…


「ふむ…ちょっと、買い物に行ってくる。」


俺は、近くのホームセンターに向かった。

キャリーバッグ、ペットコーナーに置いてると良いなぁ。

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