第27話 黒白の刀

 朝日が未だ昇らない、黒々とした烏の濡れ羽色のような夜。月明かりだけが朧に、水面に浮かぶように空へ浮かんでいた。

 春影は森林にできた丸い空間で、辻村と向かい合っていた。

 互いに腰には上等なふたふりの刀を差している。

 辻村は白いおもてに、赤い唇を半月のように笑ませ、離れた距離で春影を嘲笑している。

彼が純白の鞘から抜き放ったのは、白い刀身であった。月明かりを受け、鈍く光を放つ。

 春影は、その刀身を睨むと、右足を一歩後ろへ下げ、左足を前に出す。腰に差した黒い鞘から抜き放ったのは、夜空と同じ色をした、黒の刀。辻村の刀の光を返すように、凛とした薄青い光を放つ。

体制のそのまま、辻村へ向かって駆けていく。夜風が、彼女の陶器のように滑らかな頬を撫で、背後へと去っていく。

 キン、という音が響き、両者の黒白の刀の刃が交差する。

 2人の侍の決着を見届けたものは、この世界の月。


 そして、作者だけであった。

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