第27話 黒白の刀
朝日が未だ昇らない、黒々とした烏の濡れ羽色のような夜。月明かりだけが朧に、水面に浮かぶように空へ浮かんでいた。
春影は森林にできた丸い空間で、辻村と向かい合っていた。
互いに腰には上等なふたふりの刀を差している。
辻村は白いおもてに、赤い唇を半月のように笑ませ、離れた距離で春影を嘲笑している。
彼が純白の鞘から抜き放ったのは、白い刀身であった。月明かりを受け、鈍く光を放つ。
春影は、その刀身を睨むと、右足を一歩後ろへ下げ、左足を前に出す。腰に差した黒い鞘から抜き放ったのは、夜空と同じ色をした、黒の刀。辻村の刀の光を返すように、凛とした薄青い光を放つ。
体制のそのまま、辻村へ向かって駆けていく。夜風が、彼女の陶器のように滑らかな頬を撫で、背後へと去っていく。
キン、という音が響き、両者の黒白の刀の刃が交差する。
2人の侍の決着を見届けたものは、この世界の月。
そして、作者だけであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます