第228話 撃滅
――10秒経過、武器を置いた者すら無し。
結局誰も、救う価値すらなかった。ただの一人も。
的にされる前に、ひとまずは上空へ。
入口近くにいたリアは、またボス部屋から離れるように陰へと消えていく。
まぁ神様だし、放っておいても大丈夫だろう。
そのまま別のお願いをこなしてくれるはずだ。
次々と魔法を撃ち込んでくる、まるで自分が被害者のような面をした者達。
そんなやつらの形相は、なんと醜いことか。
殺されそうだから?
そうじゃないだろう、散々悪意しかない見殺しをしてきたからだろう。
――直接的じゃない、殺したのはあくまで魔物。
――死体すら残らない、だから結果に心を痛めることもない。
――何かをした実感はなく、自ら参加を志願し、自ら死んでいく。
――だから自分たちは、悪くない。
そんなモノは……やった側だからこその理屈だ。
あるべき助けが、支援が、待てども待てども来ない。
焦燥の中で次々と周囲が千切られ、食われ、炎に飲まれ消えていく様を見ながら、心が根こそぎ削られていった者たちは……
死者も生者も、きっと許しはしないはずだ。
少なくとも、俺はお前らのようなゴミを絶対に許さない。
『眼下の――、』
「やつはまともな遠距離手段を持ってねぇ! 上空から急降下してくるはずだから散開しろ!!」
「クソッ……届かないか! 落ちてきたら必ず【挑発】を入れる! そうしたら俺に構わず撃てッ!!」
「支援スキルは全力で掛けていくわよ!」
「今はまだ撃っちゃ駄目よ! あの距離じゃ無駄撃ちにしかならないわ! 【発動待機】を使える人はいつでも撃てるようにだけしてっ!!」
「絶対にヤツから目を離すなよォ! 動きからターゲットを予測し…………な、なんだ、ありゃ……?」
「黒い……?」
『――――"天雷"』
「…………は?」
「な、なんで魔法!? 使えないん……うぎぃぃあああァ!」
『【裁縫】Lv2を取得しました』
『【魔力操作】Lv3を取得しました』
『【家事】Lv4を取得しました』
『【光魔法】Lv1を取得しました』
『【魔力感知】Lv1を取得しました』
『【魔力感知】Lv2を取得しました』
「さ、避けろッ!! 退避だ! 退避ーッ!!」
「誰か! 障壁……をぐぉおおおアアァ……」
『【歌唱】Lv1を取得しました』
『【明晰】Lv2を取得しました』
『【魔法攻撃耐性】Lv2を取得しました』
『【魔法射程増加】Lv1を取得しました』
『【魔力最大量増加】Lv4を取得しました』
『【氷魔法】Lv1を取得しました』
「ぐっ……避け……う、動けな…………ヒッ……また、くる……ッ!!」
『【薬学】Lv1を取得しました』
『【作法】Lv1を取得しました』
『【光魔法】Lv2を取得しました』
『【光魔法】Lv3を取得しました』
『【交渉】Lv2を取得しました』
『【演奏】Lv1を取得しました』
『―――――皆殺せ、"天雷"』
「うぎぃいいいいいい……ぃ……ぃ……」
『【明晰】Lv3を取得しました』
『【水属性耐性】Lv2を取得しました』
『【魔力譲渡】Lv1を取得しました』
『【料理】Lv4を取得しました』
『【描画】Lv2を取得しました』
『【異言語理解】Lv7を取得しました』
『【疾風】Lv4を取得しました』
「た、助け……ぅ……死にたく……な……」
『【魔力最大量増加】Lv5を取得しました』
『【発動待機】Lv1を取得しました』
『【薬学】Lv2を取得しました』
『【魔力自動回復量増加】Lv6を取得しました』
『【裁縫】Lv3を取得しました』
『【氷魔法】Lv2を取得しました』
『【氷魔法】Lv3を取得しました』
「い、入口だ! いりぐっ、がぁあああああ……ッ……」
『【作法】Lv2を取得しました』
『【魔力感知】Lv3を取得しました』
『【光魔法】Lv4を取得しました』
『【狩猟】Lv6を取得しました』
『【罠探知】Lv1を取得しました』
『【暗記】Lv4を取得しました』
『【解体】Lv6を取得しました』
「もう許して!! お願いだからもう許してぇええええ!」
『【封魔】Lv2を取得しました』
『【風属性耐性】Lv3を取得しました』
『【歌唱】Lv2を取得しました』
『【料理】Lv5を取得しました』
『【明晰】Lv4を取得しました』
『【水魔法】Lv5を取得しました』
『【鑑定】Lv1を取得しました』
『【魔力最大量増加】Lv6を取得しました』
『【回復魔法】Lv5を取得しました』
『【舞踊】Lv1を取得しました』
『【土魔法】Lv6を取得しました』
『眼下の、ゴミを、皆殺せ、"天雷"』
「また……黒い、魔力が…………………ァ……」
『【魔法攻撃耐性】Lv3を取得しました』
『【家事】Lv5を取得しました』
『【疾風】Lv5を取得しました』
『【魔力譲渡】Lv2を取得しました』
『【氷魔法】Lv4を取得しました』
『【魔力操作】Lv4を取得しました』
『【裁縫】Lv4を取得しました』
『【結界魔法】Lv1を取得しました』
『【鑑定】Lv2を取得しました』
『【釣り】Lv4を取得しました』
『【心眼】Lv1を取得しました』
『【明晰】Lv5を取得しました』
『【魔法射程増加】Lv2を取得しました』
『【探査】Lv4を取得しました』
『【魔力操作】Lv5を取得しました』
『【氷魔法】Lv5を取得しました』
『【作法】Lv3を取得しました』
『【光魔法】Lv5を取得しました』
『【水魔法】Lv6を取得しました』
『【発動待機】Lv2を取得しました』
『【交渉】Lv3を取得しました』
『【加工】Lv3を取得しました』
『【風魔法】Lv6を取得しました』
『【採取】Lv4を取得しました』
『【話術】Lv4を取得しました』
『【水属性耐性】Lv3を取得しました』
『【豪運】Lv3を取得しました』
『【聞き耳】Lv3を取得しました』
『【算術】Lv4を取得しました』
『【家事】Lv6を取得しました』
『【裁縫】Lv5を取得しました』
『【暗記】Lv5を取得しました』
『【魔力自動回復量増加】Lv7を取得しました』
『【魔法攻撃耐性】Lv4を取得しました』
『【魔力最大量増加】Lv7を取得しました』
『【異言語理解】Lv8を取得しました』
凄まじいな。
さすが相応の強者だけが集まったレイドパーティだ。
腐っても全員がBランク以上のハンターだけあって、得ているスキル、培った経験も豊富でその水準がそこそこに高い。
レベルが全般的に低く、かつ所持スキルの傾向もどことなく似通っていた山賊や盗賊とはまったく違う。
おかげで計画通りではあるけれど、レベル7の魔法を放っているのに魔力がどんどん回復していってくれている。
これで大半のBランクハンターを駆除できることは想定済み。
問題は"あの二人"だが――
【探査】――生者。
ふむ……残り6人か。
全員が上手くボス部屋の入口を通過して、リアと対峙している連中ってわけね。
ならば、後片付けといこう。
ここまで能力が上昇すれば、あの二人ももう、"ただの強者"だろう。
「……凄いね。何したの?」
「別に? 通るなって、そう命じただけ」
出入口に向かえば、そこには地面に膝を突く6人の男女と、その場に佇んでいるリアの姿が。
一瞬【重力魔法】か【威圧】でも使ってる? って思ったけど、どうやらスキルに頼らない純粋な殺気に当てられたらしい。
まぁ……チビるだろうね、普通は。
発狂しないだけまだマシなんだと思う。
「ば、化け物が……ッ!!」
「くっ、がぁ、あああああっ……!」
「うっ……ううっ……」
「フッ……フッ……なんだよ、これ……」
「……」
「全部、あの、ガキのせいだ……ガキの……ッ」
化け物?
棒立ちリーダーのその言葉に、思わず反応してしまった。
「よほどあなた達の方が化け物ですよ。素材としての価値がある分、まだ魔物の方がマシなくらいです」
「ふ、ふざけるなぁああああああ!! 鉄槌下すは天の怒り、雷雲より生ま――」
「あ、与えるは牢獄 絶対零度の氷―――」
プシュッ――……
『【演奏】Lv2を取得しました』
『【薬学】Lv3を取得しました』
『【魔力操作】Lv6を取得しました』
『【交渉】Lv4を取得しました』
『【魔力感知】Lv4を取得しました』
『【明晰】Lv6を取得しました』
『【封魔】Lv3を取得しました』
「ひっ……」
「この距離で、呑気に詠唱を待つわけないでしょう? バカなんですか?」
って思ったけど、バカだからこんなことをしているんだったとすぐに納得してしまった。
「お、お願いだよ! なんでも言うことを聞く! あんたの奴隷にでもなんでもなるから……見逃しておくれよっ!」
詠唱ができなきゃ手が無いと思ったのか。
フラフラと近寄ってくるサボりの女王メリンさん。
そのまま俺の足に縋りながら命乞いを始める――なんてこともなく、
「今のうちだよッ! 死んでもこの足は離さないからやっとくれ!!」
なんというか、いろいろとさすがである。
表情や所作の演技も上手いもので、今までこうやって狡賢く生き抜いてきたんだろうなと、納得させられるような流れだった。
「うぉらあああああ!!」
「……」
「近接なら! 速度なら俺の方が上だッ!! ここで確実に――」
「……捕まえた」
殴りつける手を掴めば、すぐさま引いて逃げようとするが、筋力は明らかに俺の方が高い。
もう絶対に逃げられない、けど。
「くっ……は、離しやがれッ!!」
「良いですよ。【発火】―【白火】……どうぞ」
「……え?」
「うごぉああああぁああああああああああああぁぁぁぁっ!?」
これは良い参考になるな。
【発火】スキル使用後は、接触している任意の物体にも効果は適用される。
それは火を消す時も同様だが、効果を切る前に、その接触を外した場合はどうなるのか。
これを試していなかった。
足に縋りついていた女を蹴り飛ばすように振り払えば、すぐさま聞こえてくる断末魔の叫び。
「よく、燃えますね。無駄に手入れをしていそうなその長い髪と、あなたの豊富な体毛は」
様子を眺めていれば、最初は叫びながらもんどり打っていたのが、次第に激しく動きながらも声は発さなくなる。
『【気配察知】Lv6を取得しました』
『【探査】Lv5を取得しました』
『【遠視】Lv6を取得しました』
『【疾風】Lv6を取得しました』
『【狩猟】Lv7を取得しました』
『【解体】Lv7を取得しました』
『【絶技】Lv5を取得しました』
『【話術】Lv5を取得しました』
『【心眼】Lv2を取得しました』
『【交渉】Lv5を取得しました』
『【芸術】Lv2を取得しました』
そして20秒もかからず、二人は動きすら止めて燃え続けていた。
火耐性装備を考慮しての【白火】だったけど、この秒数なら十分効果はある。
そう判断しても良さそうな結果だ。
「うぅ……くそっ……くそっ……こんなはずじゃ……」
「私はあなたに、ちゃんと警告したのに……! だから、危ないって……!」
残り、二人。
しかし、哀れなもんだな。
「あなたが他のタンク職のように勇敢じゃなくて、本当に助かりましたよ」
「……え?」
「本当は僕に【挑発】届いたでしょう?」
これは、ただの勘だ。
でもAランクまで上り詰めた盾職で、最重要と言っても過言ではない【挑発】がレベル5未満というのは考えにくい。
たぶん、俺が上空へ退避する時も、上空から見下ろしていた時も、【挑発】は撃てたはず。
「撃てば僕は捕らえられた。でもまとめて標的にされる――だからあなたは口だけで撃てなかった」
「そ、そんな……そんなこと……ッ!」
「ハハッ、本当に最後の最後まで、一番死を覚悟できない人でしたね」
「ふ、ふざけ――っゴガ……ッ」
『【盾術】Lv5を取得しました』
『【挑発】Lv4を取得しました』
『【隠蔽】Lv8を取得しました』
『【剛力】Lv6を取得しました』
『【物理攻撃耐性】Lv5を取得しました』
『【鋼の心】Lv4を取得しました』
『【金剛】Lv6を取得しました』
これで、最後。
好きだったであろう男の死に様には見向きもせず、俺に縋るような視線を向け続ける女性。
「聞いて、ロキ君! 私は騙されていただけで、本当はこんなこと……!」
「あぁ、そういうのはいらないです。自白してましたし、記憶も覗かれてるから今更無理ですよ。それではさようなら、ユーリアさん」
「え、ぁ……ふ、ふざけないで! 本当に私は、何も悪くな―――」
『【豪運】Lv4を取得しました』
『【料理】Lv6を取得しました』
『【魔力譲渡】Lv3を取得しました』
「これで終わり?」
「うん。わざわざごめんね」
「ううん。ちゃんと全員確認した。全員……またロキを利用して、騙そうとしてた」
「……ほんと、多いね」
「こんな世界で、ごめん」
「リアが謝らないでよ。それより、一人生存者がいてさ――」
山賊や盗賊のように、あからさまな略奪目的じゃなかった。
それが今回リアを呼んでいた理由だ。
【神通】で事情を説明し、もしかしたら俺と同じような初参加組が後衛にいるかもしれない。
事情を知らないで流されている人だっているかもしれない。
そう思って、リアに記憶を確認してもらうようお願いしていた。
わざわざここまでする必要ないって、なぜか怒られたけど……
俺をスポットにしつつ、バレないように部屋一つ分ズラして降りてきてくれという無茶な注文もこなしてくれたし、リアには大感謝である。
その後は淡々と、粛々と。
今後の金銭事情も考慮し、まず死体となったハンターから剥げる装備は全て剥いでいく。
それこそ、これからどうせ死体は燃やすのだからと、本当に全てのモノを。
こういう時に相手が『悪党』だと、同情心や罪悪感が欠片も湧いてこないので気分が凄く楽である。
ちなみに焼死した二人は防具の一部が残ってるくらいで、得られるモノは何もない。
ラストアタック判定はしっかり出ていたけど、魔物と同じでその後の身体に用があるなら、この方法は厳禁ってことだな。
そして綺麗に回収したら、リアに【空間魔法】を持ってきてもらって全て収納。
かつて一緒に訪れた地、リプサム近郊のアジトへ回収した物を一式置いといてもらった。
あのアジトの所在を一部の人は知っているけど、入口を厳重に塞いでしまえばどうにもできないだろうからね。
これもまた、未来の本購入代金として、先々換金が必要になる場面もきっとあるんだと思う。
ただボスの死体は例外だ。
これは近接の皆で倒したモノ。
ならばグロムさんはもちろん、散っていった皆にも得る権利はあると思っている。
クッソデカいが、【飛行】状態にさえ持ち込めれば町まで運べないことはない。
火岩洞の最初の入口が通るか少々不安なところだけど、ここは気合でなんとかするしかないだろう。
リアには念のためもう一つの確認をしてもらいつつ、また夜に会おうという話で一度解散。
さて……
「グロムさん、起きてください。もう大丈夫です。終わりましたよ」
「ん……ん、あぁ……ロキ、か」
「えぇ。全てが終わりました。とりあえず――あの片腕を失った男性と一緒に、町へ帰りましょうか」
そう言うと、グロムさんは周囲を見渡した後、悟ったように深く頷いた。
「そう、だな。本当に命拾いをした。ロキ、ありがとう。この恩は一生忘れない」
「ははっ、大袈裟ですよ」
逆にできることをしない現状に、心の中で謝罪をする。
本当は【回復魔法】でもかけてあげたいが――魔力を隠すなら肉の中。
黒い魔力をグロムさんにも見られることなく対処したのだ。
ならばこのまま隠し通すまで。
幾分寝たおかげか体力も回復したようなので、まずは唯一残された死体を担ぎ、護衛をしながら洞窟の外へ。
その後、俺がボスをハンターギルドの修練場に運ぶということで行動を開始した。
さてさて、ギルドは『白』なのかなぁ……
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