第204話 卒業(ベイルズ樹海)

(オッケー、オッケー、オッケー、……【盾術】はムーリー、あとはオッケー、オッケー、オッケー……)


宿の自室で朝風呂に入りながら、のんびりステータス画面を眺め最終チェックをしていく。


目標としていたこの複合狩場での成果。


その内容に漏れがなければ、俺はこの狩場を今日で卒業、そのまま町を離れることになる。



レベル7:【体術】【剣術】【短剣術】【棒術】【騎乗】【騎乗戦闘】


レベル6:【槍術】【斧術】【槌術】【鎌術】【罠生成】【罠解除】


レベル5:【弓術】【杖術】【威圧】【風魔法】【土魔法】【捨て身】【旋風】


レベル4:【盾術】【咆哮】


レベル2:【魔力操作】【魂装】【剛力】


レベル1:【明晰】【二刀流】【絶技】




我ながらかなり狩りに没頭した、というより没頭できた狩場だったなと思う。


女神様達も必要最小限の連絡に留めてくれているし、効率の足枷になるようなモノは何も存在しない。


途中ハンスさんとのやり取りはあったものの、それ以外はただひたすらに。


自分が満足するまで1日を狩りに捧げる最高の育成期間だった。


【魂装】でオーガから129と124の防御力上昇も引き当てられたし、両手に剣持ってブンブンしてたら【二刀流】なんかも自然取得できたしね。



そしてここまで気合を入れても到達できない、スキルレベル8の壁は非常に厚い。


正確な計測ではないにしても、経験値バーの伸びがそれこそビタ止まりに近いレベルで止まるのだ。


体感でいえば、レベル6から7に上げる時の10倍くらい必要経験値があるのではないかと思ってしまうほどの壁。


レベル4から5への必要経験値が3から4に比べて確定で10倍に上がるので、これと同じ現象が起きてるとしか思えない。



(上がらないわけじゃないけど、たぶんここで粘れば年単位、まさにMMOの世界だな)



強くなるほどに1歩の歩みが遅くなるのはこの世界でも共通だ。


だからこそ、ここで心挫けるか、それでも進めるかで差が生まれてくる。


そう思うと――ついついニヤニヤが止まらなくなってくるね。


ハードルが高いほど、俺は相対的に有利になっていく。


少しでも伸びるのであれば、俺は諦めないからな……ふははは。



ただ全てが上手くいったわけではない。


ロキッシュの【重力魔法】は未だに思い出してしまうが、あれはまぁ、駄々を捏ねれば俺が天に召されそうだからまだ諦めもつく。


でも『』はモヤッとした気持ちだけが残ってしまった。


結局【魂装】スキルを得たあの日、夜に【神通】を使って確認したのだ。


リルの様子ももちろんあったが、スキルの振り直しは可能なのか、と。


その時の話し相手はフェリンだった。


そしてフェリンはこう言った。



「そ、それは秘密だよ!」



もうこれは、答えを言っているようなものである。


可か不可かという質問に濁す答えしかできないのであれば、可だけど何か特殊な条件がある、もしくは表に出せない何かしらの制限――神界の禁忌とやらに引っ掛かっているとしか思えなかった。


潔く『不可!』と言い切ってくれればまだ楽なんだけどなぁ……


ありそうだけど俺が利用できるか分からないというのは、かなり今後の判断に悩んでしまう。


まぁちょっと揺さぶってみたら、多少見えてくる部分もあったけどね。



「あ~あるけど言えないタイプか~……」


(うっ)


「何か条件があるのかな~……」


(……)


「それとも、どこかに隠されているのかな~……」


(そ、そんなこと……)


「地中? 空? 水の中ってパターンもあるけど……」


(……)


「いやいや、やっぱりファンタジーだし建物の中かなぁ。ダンジョンとか~……」


(なんで!?)



もうちょっと続けられれば、さらに絞り込めたかもしれないんだけどな。


途中でフィーリルが乱入してきて、今にも俺の横に降りてきそうな雰囲気が声色から伝わったので、ビビッてその日は【神通】を閉じてしまった。


まぁばあさんに依頼した『本』が出来上がってくれば、ダンジョンに関するモノもいくつかあったと思うし、そのうち何か進展することもあるだろう。


急いては事を仕損じる。


ならば今は損が少なく、着実で効率的な立ち回りをしていくしかない。


まずはそのためのマッピング、かな?



「地図」



視界に地図を広げ、これからのルートを思案する。


ラグリースの南部中央付近にあるリプサムから、東と北のルートは概ねマッピングを終えていた。


【地図作成】をレベル2にしたことによって、地図上に赤い国境線が自動で反映されるようになったので、その線を目安にラグリース側の黒く染まったエリアを黙々とマッピングしていったわけだ。


北の樹海も、山はさすがにペットが監視しているって話なので越えていないが、魔物を探すついでで裾野のエリアは完成していたので、あとはここから西に向かい、埋めながらラグリース西側を南下していくのがベストだろう。


とりあえずはラグリースの地図を一旦完成させる。


一国の地図作成に費やす労力を把握し、そのあとはマッピングをどこまで優先させるか考えていけばいい。


あとはもう大して期待しちゃいないが、道中新しい魔物と出くわせれば御の字ってところだな。


ばあさんところに寄るのは、この国の地図が完成してからでも遅くはないだろう。


よっしゃ!



パンッ!



両頬を叩いて気合を入れる。


さーて、今日からまた、冒険の旅に出ますかね!

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