第52話 目標到達

 ふっ……はっ……ふっ……


「そいっ!」


 ブシュッ……


 目の前で腹を裂かれたポイズンマウスが倒れる。



『【毒耐性】Lv7を取得しました』



「っしゃあああ!!」



 スキルレベルアップのアナウンスを確認しつつも、すぐに首を落としてナイフで腹を裂き、魔石を抜き取ったら尻尾も落とす。



 あれから約10日ほど。


 異世界人の情報を聞けたところで俺がやることは変わらない。


 結局雨が降ろうが強風だろうが、休むことなく朝から晩まで狩り続け、とうとう念願の【毒耐性】レベル7を獲得した。


 逸る気持ちを抑えながら、俺は【土魔法】による石柱で自らを持ち上げ、安全地帯の上でサンドイッチを齧りつつステータス画面を確認する。



 名前:ロキ(間宮 悠人) <営業マン>


 レベル:11  スキルポイント残:41


 魔力量:72/72 (+18) 剣を所持している場合のみ魔力上昇付与でさらに+50


 筋力:   39 (+6)

 知力:   40 (+11)

 防御力:  38 (+112)

 魔法防御力:38 (+6)

 敏捷:   38 (+18) 

 技術:   37 (+12)

 幸運:   43 (+3)


 加護:無し


 称号:無し


 取得スキル


 ◆戦闘・戦術系統スキル

【棒術】Lv1 【剣術】Lv2 【短剣術】Lv1 【挑発】Lv1 【狂乱】Lv1 


 ◆魔法系統スキル

【火魔法】Lv2  【土魔法】Lv3 【風魔法】Lv4 


 ◆ジョブ系統スキル

【採取】Lv1 【狩猟】Lv2 【解体】Lv2 


 ◆生活系統スキル

【異言語理解】Lv3 【気配察知】Lv3 【視野拡大】Lv1 【遠視】Lv1

【探査】Lv1 【算術】Lv1 【暗記】Lv1 【俊足】Lv1 


 ◆純パッシブ系統スキル

【毒耐性】Lv7 【魔力自動回復量増加】Lv1 【魔力最大量増加】Lv1 


 ◆その他/特殊

【神託】Lv1 【神通】Lv2 


 ◆その他/魔物

【突進】Lv3 



(しゅ、しゅごい……)



 思わず脳内で噛んでしまうくらい、スキルレベル7の上昇値は大きかった。


 レベル6で30の上昇にも驚いたが、レベル7になれば60もの上昇。


 粘っただけの価値はあったと言える。



 スキル経験値を小まめに計測していたところ、レベル6から7への区間はおおよそ5匹倒すと1%上昇。


 1%未満の小数点は表示されないためあくまで推測だが、仮に未取得からスキルレベル1の必要経験値を『100』とした場合、スキルと経験値の関係性はおおよそこのくらいになることが分かってきた。



 スキルレベル1取得に必要な経験値は100  

 スキルレベル1所持魔物から得られるスキル経験値は20


 スキルレベル1から2に必要な経験値は200  


 スキルレベル2から3に必要な経験値は600  


 スキルレベル3から4に必要な経験値は2,000

 スキルレベル4所持魔物から得られるスキル経験値は400


 スキルレベル4から5に必要な経験値は20,000 


 スキルレベル5から6に必要な経験値は60,000 


 スキルレベル6から7に必要な経験値は200,000


 

 このことからたぶんスキルレベル2や3の魔物も、必要経験値の5分の1が魔物から得られる経験値なんだろうと予想できるな。


 こうして数値化していけば、高レベルスキルを所持している魔物の重要性がどれだけ高いかよく分かる。


 特に弱いくせして特定のスキルレベルだけ高いようなら、まさにボーナスタイムといった具合でステータス爆増を狙う大チャンスとなるわけだ。


 しかし問題はここから【毒耐性】レベル8を目指すべきかどうか……


 この増え方だと次は1ヵ月コースになりそうなので、そろそろ一度ルルブの森へ行き、オーク辺りと闘ってみて自分の防御力がどの程度通じるのかを確認するべきだろう。


 既にステータス上で防御力が合算150。


 そこに鎧の硬さも追加されるので、これでもまだ痛いようならロッカー平原で追加の引き籠り確定である。



(それにしても、色々なスキルをゲットしてきたなぁ……)



 分かっていて取得やレベルアップを狙ったもの、なんとなく狩りをしていたら取得できてしまったものなど様々だが、それでもこうやってスキルの取得数が増えてくると楽しみに拍車がかかるというものだ。


【火魔法】は魔力が余った時に、消費魔力2で済む指先マッチをやり続けていたらいつの間にかレベルが2に。


【魔力最大量増加】、【魔力自動回復量増加】も魔力消費を意識的にやっていたので、そのついでに上がったのだと思われる。


 ここら辺はパイサーさんの言っていた通りだな。


 そして嬉しい【剣術】は連日通い詰めた賜物ともいうべきで、ひたすら剣で倒していたら上がったし、逆にこれだけ倒しても上がらなかったら困るくらいだ。


 ただ【短剣術】は意識していなかったので意外だった。


 ナイフは魔石を取ったり討伐部位の切り取りに使っていたが、【解体】に判定が回っていると思っていたのでラッキー獲得みたいなものである。


【遠視】、【視野拡大】はだだっ広いロッカー平原でひたすら魔物を探していたから。


【算術】、【暗記】は1体の上昇値を測定したり、あと何匹で上がりそうなどを計算しながら狩りをしていたから。


【俊足】は移動を可能な限り走っていたから。


 この辺りは取得できた理由もなんとなく分かるが、よく分からないのは【挑発】、【狂乱】、【探査】の3つだ。


【挑発】はポイズンマウスが複数体被っている時などに釣るような動きは取っていたものの、そこまで待ち狩りをした記憶も無い。


 慣れた頃には魔物を見つけ次第ひたすら突っ込んでいたので、いまいちどういう条件で取得できたのか謎が残る。


 そしてもっと謎なのは【狂乱】という……名前からしてヤバそうなスキルだ。


 ちなみに詳細説明はこのようになっている。



【狂乱】Lv1 使用後は全ての通常攻撃動作に能力値120%の限定補正を行う。ただし制限時間が経過するまで、周囲の生物に対する通常攻撃動作以外を行うことができなくなる。 使用制限時間1分 魔力消費0



 いやいや、怖過ぎるだろう……


 まさにバーサーカー状態。


 使用時間1分の戦闘アクティブ系スキルなので、ロッカー平原で使えばまず問題無さそうな気はするが、格下狩場ではコレがなくても十分狩れるよねって話になるし……


 魔力消費0が有難いくらいの、まったく使い所が分からないスキルである。


 ちなみにまだ怖くて1度も実験すらできてない。


 ベザートの町中で使ったら大惨事の匂いしかしないスキルだ。



 あとは予想外ながらも超が付くほど嬉しかったのがこの【探査】スキル。


 ポイントを振ってでもレベルを上げたいくらいの優良スキルで、レベル1の状態でも使用者を中心に半径30メートルの探査機能を発動してくれる。


 同じような【気配察知】はレベル3でも半径15メートルだが、こちらは動く物全てが対象。


 対して【探査】は『エアマンティス』など、個別に頭の中で探したい対象を思い浮かべると、探査範囲に入れば場所が自然と分かるようになるので、数の少ない魔物を探したい時は相当重宝するスキルになることだろう。


 もちろん同時使用も可能なので、取得できたここ数日はどちらも発動させながらエアマンティスを効率的に狩れたおかげもあり、予定より早く【風魔法】もレベル4にすることができた。



 ふふふっ……


 いやー強くなってるなぁ。


 強くなってる実感がするよ。


 目の前の景色を眺めれば、俺が立てた石柱が所々に立っていて景観も変わってしまっているけど……


 そんなこと気にしてもしょうがない。


 もう俺自身のレベルはほとんど経験バーが伸びなくなってしまっているので、さすがにそろそろルルブの森に行ってもなんとかなりそうな気がするんだよね。


 今日の狩りが終わったら一度アマンダさんに相談してみるかな?


 そう思いながら、後半戦の狩りを開始するのだった。

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