第3話

捜査6課の片隅の所々合成皮革がひび割れたソファーは、ひどく座り心地が悪かった。

面接というからてっきり誰かと1対1だと思っていたのに。

「───なんでみなさんそっちに立ってるんですか」

僕の前の椅子には菊住警部が座り、その後ろにはさっき挨拶した6課の面々がずらりと並んでいた。

「専門分野、ってのがあってね」

菊住警部が後ろのメンバーを一人ずつ指さす。

「日野くんはこのむっちりボディだが、高野山で千日行を修めた修験者なんだ。うちの中で一番の好戦派でね」

「山を降りたらご飯が美味しくて、ついこんなになっちゃったけどね」

大きなお腹をさすりながら日野さんが恥ずかしそうに呟く。そう言われてみると、日野さんの手首には何やら文字を刻んだ数珠が付けられていた。

「森繁くんはハーフなんだけど、エクソシストの家系で彼自身早くから悪魔祓いをやってきた」

森繁さんは目が隠れるほど長い鳶色の前髪を揺らして小さく会釈した。ひょろりとして猫背の姿からはエクソシストなんて想像もできない。

「船場ちゃんはこう見えて恐山のイタコを小さい時からやっててね、うちの事件で心霊関係を主軸にやってもらってる」

その言葉を聞いてミルクティーのような金髪を揺らした船場さんがバンバンと手を叩いた。

「菊住サンに褒められるの照れる〜!」

手を叩くたび、彼女の真っ青で魔女のような長い爪についたラインストーンがキラキラとさざめいた。

「鈴掛さんは神道の専門家で、神楽なんかもやれる。どちらかというと彼女は後方支援と、偵察や捜索なんかが多いね」

「私にやれることは、限りがありますので」

メガネにショートカットの小柄な女性がそう言いながらこくり、とうなずく。真っ黒の髪の毛に化粧っけのない姿は船場さんと対照的だ。

「佐々木さんは超能力の専門家だ。ヨーロッパで超科学現象を解析する大規模実験に参加していたんだけど、同時に彼は”イカサマ”の専門家でもあってね」

白髪混じりの穏やかそうな初老の男性がペコリと小さく会釈する。

「人の仕業も、多い。ですから」

菊住警部は後ろに並ぶメンバーを見渡した後、したり顔でこちらを見つめた。

「君の事件当日の出来事について、それぞれがそれぞれの持つ専門分野でまず分析を行う。その上で私が捜査方針を決めるんだ。そして”逮捕”する」

「逮捕?」

僕の声が思わず裏返る。

「そう、逮捕だ。”殺人”を犯した”犯人”を”逮捕”する。至極真っ当な、警察の仕事をするんだよ」


目の前で菊住警部が小さな銀の振り子を揺らす。

振り子はシーリングライトの光を集め、鈍く光る。

「じゃあ、体の力を抜いて。振り子を見ながら私の質問に答えて」

「───はい」

「君の意識をあの時に戻そう。”何か”が起こる前に君は何をしてた?」

「僕は───」

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