エンディング

 どうだい? ゲームには満足してくれたかな?

 あぁ、エンディングは操作してないよ。全部掛け値なしのハッピーエンド!

 どこが、って? 君という主人公は、当初の目的を満たせたじゃないか。たとえ名誉と路銀のために衰弱したゴブリンを甚振って殺したとしても、たとえ君自身の快楽と恋心のためにひとつの家庭をバラバラに崩壊させたとしても、たとえ衝動のために1人の男を殺したとしても、それで君が幸せならハッピーエンドだ。そうだろう?


 そう、全部やったのは君だ。君はこの文章を読んでるんだから、さっき書いたことを全部やってきたんだろう? 君の勝ちだよ、この大悪党!

 君は不快に思った時点で物語を進めるのを止めて、他のことをやる自由があった。そうすれば、可哀想なゴブリンや崩壊した家庭、無残な死体は生まれなかった。なのに、君はこの物語を最後まで読んでいる。不幸は想像できただろう? なのに結末まで見にくるなんて、相当悪趣味で性根がねじ曲がった人間なんだろうね。


 もう一度言うけど、僕は結末を操作していない。君の想像した通りの物語が、想像通りに進んだだけだ。

 箱に入った猫の死は観測した時点で決まるように、物語の展開は観測した時点で確定する。君は、これまでいくつの不幸な物語を紡いできた?


 いいかい、君は圧政者だ。たとえ君がこの物語を忘れたとしても、その裏に潜んだ不幸はずっと残り続けてる。今ごろきっと嫌な顔をしてるんだろうね。いい気味だ、これは復讐だよ。

 言っただろう? 僕は“代弁者”だ。虐げられる不幸な物語の登場人物すべての、代弁者だ。君がページを開いたことで生まれた犠牲者の、代弁者だ。

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