第5話
罪人はこう答えた。
「毎日石を積みながら、生前子供と写真を見ながらこういう所に行きたいねえ、と会話していたのを思い出したんです。それで建物とかを思い出しながら積んでいたんです」と。
そこにいた皆が納得した。
賽の河原の罪人はだいたい十年で転生する。その期間中ほぼ毎週彼女は建築物を再現していった。中には一日で終わらず途中で崩される物もあったがなんとか週一回のノルマをこなしていった。
もうすぐ転生という最後の日、彼女は石を沢山積み上げ山を作った。
最後にポツリと、
「子供にも見せたかった」
と呟いた。それが叶わない願いだとしても。
それは、まるで見ようによっては富士山の様だった。
地獄側の厚意により、その作品だけは自然と崩れるまで何年もそのままにしておいた。
彼女の子供がその山を見られたかは誰にも分からない。
ー完ー
あの世の端で記憶を残す 東寒南 @dakuryutou
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