32話 優一VS邪竜アルザラム
優一は気を開放して邪竜アルザラムと対峙する。
琴音たちはイルミに案内され、アトランティアの王宮へ向かった。
王宮の扉は高さ50メートルほどあり、並みの力では開ける事が不可能と思わせるほどだった。
扉は、槍を持った二人の魚人兵士が警備しており、兵士はイルミに見るとすぐさま敬礼をする。
兵士が何かを合図すると、扉は自動で開き始める。
琴音たちは中に入ると、大きな柱が何本も聳(そび)えており、赤い高級絨毯が真っ直ぐに奥へ続いていた。
奥へ進むと幅広い階段があり、その上には宮殿の入り口ほどの大きさではないが、立派な扉があった。
扉に近づくと自動で開く。
謁見の間には、騎士風の身なりをした男女が対面に向き合い玉座まで連なっている。
玉座の前には、女王が立っており、片手には三叉槍(さんさそう)が握られていた。
気高い顔に、床へと当たりそうな長く美しい透き通った水色の髪。
イルミは女王様の前に行くと、片手を腰に当て律儀に礼をする。
「大変ご心配をおかけして申し訳ありません。アリエスタ女王様」
「顔をあげなさい。イルミ。貴方が無事で良かったです」
「勿体ないお言葉有難うございます」
「貴方のご家族が心配しておりました。早く客室間に行ってあげなさい」
「はい!ですが・・・」
「言いたい事は分かります。貴方の後ろにおられる客の事であろう?心配せずとも、そちらの方達の事は、その水晶球でずっと見ておりました。気にせず行って来なさい」
イルミはアリエスタ女王に感謝を述べると客室間に向かった。
「|其方(そなた)達には、イルミが大変ご迷惑をお掛けしました。礼を言います」
アリエスタ女王は琴音たちに会釈(えしゃく)した。
琴音達も律儀に頭を下げる。
「この度は、私達に謁見して頂きありがとうございます」
「貴方達には感謝しきれません」
琴音達は嬉しそうな表情を浮かべる。
しかし、それもつかの間、女王が謁見の間に浮かぶ水晶球に三叉槍を向けると、そこには優一と邪竜アルザラムが投影されていた。
「優一さん!」
「兄さん!」
「本来ならば・・・あの戦いの間には私と兵士達が赴(おもむ)くはずでした。ですが、彼のお陰で私たちは誰一人傷つく事無く、事を終えれるのです」
琴音達・アリエスタ女王・兵士達は、水晶球から優一を見守っていた。
〇
「どうした?来ないのならこっちからいくぞ!」
「ぬかせ!」
先に攻撃を仕掛けたのはアルザラム。大きな口を開けて黒いブレスを吐き出す。
優一は軽く避けると、気弾を放つ。
だが、アルザラムも気弾を避けると、大きな拳を優一に振り下ろす。
優一はアルザラムの拳を、拳で打つと邪竜は体制を崩す。
「なっなに!?」
「どうした?見くびってた相手が強くて驚いたか?」
「そんなはずは・・・魔力を持たない貴様如きに、この私が・・・本来の力さえあれば・・・」
邪竜アルザラムは、感知能力が使えるらしく優一の力を確認したが、気を感じ取るまでには至っていなく、誤算を生じた。
しかし、悔やんでいたアルザラムは笑みを浮かべる。
両手を上に掲げると、何やら詠唱を始めた。
それを見ていたティファリアは声をあげる。
「まずいです!このままでは優一さんが・・・ここが吹き飛びます!
「ティファリアちゃんどういう事?」
「あれは、《詠唱魔法》と言って、古代の神々や魔王が愛用していたと言われる魔法です!今では誰にも使う事が出来ないとされていたのですが・・・まさか、こんな形で目にするとは思いもしませんでした」
「兄さん・・・」
「大丈夫です。彼ならきっと負ける事はありません」
琴音達は心配する中、優一は余裕の笑みを浮かべていた。
「何が可笑しい?」
「いや、頑張るなって思って」
アルザラムは歯を食いしばって優一を睨みつける。
「馬鹿にするな!!『黒邪炎(ブラックフィアンマ―)』」
アルザラムの両手に集まっていた黒炎は優一に向けて放たれる。
優一は、黒邪炎を両手で受け止めるが、おされてしまう。
「ほお、耐えるか」
黒い巨大な炎の塊はアトランティアの上空を覆うほど大きく、黒邪炎の影により辺りが暗くなる。
「よく耐えたな!この我が誉めてやろう。早く飽きられて楽になれ」
「馬鹿かお前は」
優一は罵倒した瞬間、気を高める。
「せっかくのプレゼントだが、少しデカすぎるから返すぞ!」
優一は両手に気を集中させる。すると膨大な気が集まり出す。
「オプション付きだ。受け取れ!『リゲル』」
優一の放ったリゲルは黒邪炎を押し戻しアルザラムへと命中する。
邪竜アルザラムは海底中に轟くうめき声と共に海の果てへと飛んでいった。
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