26話 下準備
優一は琴音とティファリアに奴隷店の場所とガレスとリリィが捕まっている事を伝えた。
「そんな…二人が捕まってるなんて、いったい…」
「詳しい事は俺にも分からない。二人を救出した後に事情を聞いてみよう」
「…はい」
「三日後、オークション会場を襲撃する。それまでに俺達で、奴隷として買われた人達を救い出す」
「ですが、助ける事が出来ても鉄の首輪と奴隷の刻印をどうにかしないと…」
「そっちの方は俺に任せてほしい」
「何か策があるのですか兄さん?」
「ああ!」
話を終えると、優一は琴音とティファリアに二人の部屋で寝ているラティスの元へ案内された。
ぐっすりと寝ているラティスは寝言で親を呼びながら涙を流す。
琴音は指で涙を拭きとる。
「まだこんなに小さいのに奴隷として買われるなんて…」
「それがこの世界では当たり前なんだろう…」
「私も小さい頃から旅をしてきましたけど、こんなに沢山の奴隷された人達がいる街を訪れたのは初めてです」
三人の話し声で目を覚ますラティスは天井をしばらく見つめ、意識がはっきりするとベットから飛び起きあがる。
「お母さん!お父さん!…あっ!旦那様にご飯の用意をしないと」
「もういいんだ!!」
優一がそう一言を言うとラティスは涙を流す。
「やっぱり…夢じゃなかったのね……お父さん…お母さん…」
ティファリアはラティスを抱きしめると、胸の中で泣くのであった。
「二人共、明日は忙しくなるから…」
そう言うと、優一は自分の部屋へ戻った。
二人は優一の背からは怒り気迫を感じた。
▽▽▽
オークションまで残り二日。
優一は琴音にラティスの養護を任せて、遥か上空から街を見下ろしていた。
「ティファリア、俺達が初めて境界を越えた場所に滅んだ国があったろ?」
「はい」
「その場所と、この街の付近に転移魔法を作ることは可能か?」
「出来ます。ですが、魔法を使って奴隷にされた人達を全員転移させるのには膨大な魔力を使う事と転移先に予め魔法陣を書いておかないといけません。それに転移魔法を使用してる間は、私はその場から離れる事が出来ません…」
「分かった。この街にはもう来ることは無いから魔力を思う存分使っても大丈夫だ。それとティファリアの警護は俺に任せろ」
優一はそう言うとティファリアの顔を両手で包み込むように触る。
「えっ!?優一さん!!ちょっっと、私まだ心の準備が…」
優一は顔を近づけると、ティファリアは目を瞑(つむ)る。
「よし!これで大丈夫だ!」
「へっ?」
ティファリアはキョトンとした顔をする。
「どうかしたか?」
「いえ・・・何でもないです!」
ティファリアは怒った顔をして、エアストヴェルトの崩壊した国へと向かった。
優一は琴音とラティスの元に戻る。
琴音はラティスをお風呂に入れて、新しい服を着せて髪を梳かしていた。
「綺麗な金髪だね」
琴音は微笑むと、鏡越しで琴音の顔を見たラティスは複雑な気持ちになる。
「…お母さんも綺麗な髪だねって梳かしてくれました…私、旦那様の所に戻らなくてもいいのかな?」
「お母さんとお父さんも、貴方がこうして無事に生きている事を願っているはずよ」
「…ありがとうございます。琴音様」
「様何て付けなくていいよ」
「いえ、私にとって琴音様は神様と同じくらい大きな存在です。様を付けさせてください。お願いします」
「神様って…分かった、分かりました!様つけて良いから頭をあげて。髪を結びますよ」
ラティスは円満の笑みを浮かべた。
「ただいま」
「おかえり兄さん。それで、計画の方はどうですか?」
「順調だよ。ティファリアにはエアストヴェルトの滅んだ国に転移魔法を繋げる為に向かってもらった。琴音には奴隷にされた人達がエアストヴェルトに入った時に重力で身体に負担が掛からない様に《グラビド》を使って軽くして欲しい」
「分かったわ」
優一はラティスに視線を向けると、おどおどしてお辞儀する。
「初めまして、ラティスと申します」
「見違えたな!」
「でしょ!やっぱり女の子は綺麗な格好をしてないとね」
琴音はラティスの髪をお団子にしてまとめる。
「はい!完成」
「凄です!ありがとうございます!」
ラティスは脚を揺らして喜ぶ
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