25話 街の調査

優一は部屋に戻ると琴音とティファリアも戻ってきた。

二人は優一にお願いされていたこの街で買われている奴隷の家を調べていた。

「街全体、奴隷がいる家を特定する事が出来ました」

琴音は黙ったまま優一と目を合わせようとしない。

「何かあったのか?」

「ごめんなさい兄さん・・・」

突然、謝る琴音に対して優一は困惑する。

「どうかしたのか?」

ティファリアは申し訳なさそうに話し始める。

                    

                  ○○〇


「ティファリアちゃん最初はこの家から様子を伺ってみましょう」

「分かりました」

二人は優一にお願いされた、今この街で奴隷として買われた人達の調査をしていた。

街の端には農作物を育てる畑や田んぼがあった。

首輪を付けた、上半身は裸でぼろいズボンを穿いた青年達が田んぼを耕していた。

畑では同じく古い布切れを着た女性が農作物を収穫していた。

「おい!どういう事だ!収穫量が少ないぞ」

「申し訳ございません・・・ですがこれしか立派に実ったのが無くて・・・」

一人の奴隷の女が、主人であろう男に謝る。

「嘘を付くな!」

「う、嘘何て付いてません」

男は顎の髭を触りながらニヤつく。

「ほお。ならば〈クリカ〉よ」

「はい・・・」

「お主は畑の作物を盗んでいないな?」

クリカと呼ばれた奴隷の女性は沈黙をする。

「どうなんだ!!」

「盗んでません!」

主人の質問に答えた女性は、突然背中が燃え出す。

痛みで悲鳴をあげた女性は地面に倒れこむ。

「嘘を付くからこうなる」

「も、も申し訳ございません。ですが、子供がお腹を空かせて・・・」

「言い訳はいい!!それにお前達、家畜が貴重な食料を盗み食いするなどと、何様のつもりだ!!お前達の子供がどうなろうと知った事か!」

男は痛みで地面に這いつくばった女性の頭を踏みつける。

「悪い事をしたら何て言うのかな?」

「・・・申し訳ございません」

「聞こえないぞ!」

「申し訳ございません!もう作物を盗みません!」

「よろしい。お前たちは残飯で十分なんだ」

二人は奴隷と主人のやり取りを見過ごし次の家へと向かった。

(我慢、我慢、我慢、我慢しなきゃ・・・)

二人はおおかた街を見回る。

しかし、最後で家であろう場所に辿り付くと、そこは話し合いの時に優一の部屋から見えた奴隷の女の子と豪華な服を着た男の家を見つけていた。

二階建ての立派な屋敷は庭師によって手入れされた花壇や木で華やかだった。

二人は誰にも気づかれず屋敷の窓を覗き込む。

街で買い物をしていた女はどうやら家にはいないようだった。

中には女の子が豪華な服を着た小太りの男に頭を下げて何かお願いをしていた。

「お願いします。お父さんとお母さんに合わせて」

少女を男に懇願するも男は拒否をする。

「お前のお母さんは使えなくなった父親の介護をしているから会えないのだ」

少女は親に会えなくて落ち込む。

「それより、部屋の掃除は終わったのか!?使えない二人の分までお前が働くんだ」

「申し訳ございません」

少女は掃除道具を持ってまだ掃除が終わっていない部屋の掃除へ向かう。

「二人のやり取りからして、この家には三人の奴隷が居るみたいですね」

「そうですね」

二人は親の居場所を特定する為に《感知能力》を使う。

しかし、屋敷の中には少女の魔力と男の魔力しか感じ取ることが出来なかった。

「おかしいですね」

「魔力が感じない・・・『ルプラン』」

琴音は魔法を唱えると立体的な屋敷のマップを表示する。

「やっぱり、この家には二人しかいない」

ティファリアは気を使い空に浮かび上がると屋敷の窓をバレない様に片っ端から覗き込む。

「ちょっと待って!ティファリアちゃん」

琴音もティファリアの後に付いて行く。

二人は屋敷の中を窓から見終える。

「あの子の両親はどこにもいません。いったい・・・」

二人は違和感に気付いた。

それは、琴音によって表示されたマップが三階建てに表示されていた。

「この家には地下室があるみたいですね」

二人は正面の玄関に行くとドアをノックする。

「はいはい。今行きますよ」

男の声と共に扉を開くと同時に二人は気づかれない速さで家の中へと侵入する。

「あれ?誰もいない・・・」

二人は手分けして地下へ続く階段を探す。

琴音は屋敷の中で一番大きな部屋の扉を見つける。

どうやらそこは、この家の夫婦の寝室ようだった。

大きなベッドに正面には暖炉があり、最近使われた痕跡はなかった。

だが、暖炉の部分には何か動いた痕跡があり、所々、埃が載っていなかった。

琴音は暖炉を調べると、細工が施してあった。力を加えると暖炉は動く仕組みになっていた。

辺りは暗く、琴音は《フレイ》を唱えて辺りを明るくすると地下へと続く階段を下りて行く。

階段を降りると、そこには一体の骸骨とまだ腐敗しきっていなかった女の遺体があった。

遺体には首輪がしてあり、琴音はこの二人があの少女の両親だと直感で判断した。

この事をティファリアに伝えようと部屋を出ようとした瞬間、背後に近づいてた家主に気付くのに遅れた。

「動くな!動くなよ」

琴音は両手をあげる。

「どういうつもりで私の屋敷に忍び込んだか知らないけど、まあいいでしょう。これで新しい奴隷がただで手に入れる事ができた!」

男はゲスな笑みを浮かべる。

「あいにく様、私は貴方の奴隷になるつもりはないです」

「お前の有無は関係ない。背中に奴隷術の刻印とこの首輪を付けたら、あら不思議、奴隷の完成するのだよ」

「貴方馬鹿ですか」

男は琴音に暴言を言われて呆れた顔をする。

「馬鹿なのは貴方ですよ。これから奴隷になろうというのに」

男は背後から琴音の首に首輪を付けようとした瞬間、コンクリートの床に崩れ落ちる。

男は重力魔法グラビドによって体重が倍増したのだ。

階段の方からは誰かが降りてくるコツコツと足音が聞こえてくる。

「大丈夫ですか?琴ねぇ」

「ありがとう。ティファリアちゃん」

「何だ・・・この呪文は」

「貴方が知る必要はないことです。それより、話して貰いますよ。奴隷の刻印とこの首輪について」

「だ、誰が話すか」

「そうですか・・・『グラビド』」

琴音は、ティファリアのグラビに上乗せにして、男の身体の重さを増やす。

男は苦しそうな声をあげた方と思うとすぐに話した。

二人は呪文を解くと男は苦痛の表情から解放される。

「奴隷の刻印は主に嘘を付いたり歯向かったり敵視を懐いたら背中に熱い炎が立ち昇る仕組みになっている。そして、あんたが持ってるその首輪は付けた人以外が外したりすると爆発を起こすようになっている。またどこにいるかも特定出来て、国に提示すると格安で捕えてくれるんだ」

男が話し終えると誰かが地下へ降りてくる足音が聞こえくる。

「旦那様、ここにいますか?お部屋の掃除が終わりました」

少女はおどおどした様子で地下の部屋に入ってきた。

「丁度いい所にきた!この者たちを魔法で拘束するんだ!!」

少女は突然の事で困惑する。

男は困惑した少女に腹立てる。

少女は商人が動いた事によって、男の背後の両親の遺体に気が付く。

腐敗しきっていなかった女の遺体をみた少女は驚愕した。

「お母さん!お母さん。ねぇお母さん起きて」

「起きるわけないだろ!!その女はとっくに死んでるからな!そんなことより、こいつらを魔法で取り押さえろ!!」

少女は涙を流し腐敗した母の胸元で泣く。

男は少女のお腹を蹴る。

「ラティス、この女たちを・・・」

男が名前を呼んで少女に命令を言おうとした瞬間、琴音は男の顔を掴み地面に叩きつける。

「それ以上喋らないで」

男は気を失う。

ティファリアは、ラティスに《回復魔法》をかけるとラティスを抱える。

琴音は男の寝室に合った布団で両親の遺体を包むと屋敷を後にした。

         

             ○○○


二人は事の事情を優一に話し終えると優一は怒ることはなかった。

「二人共、よくやった!」

優一は笑顔で二人の頭を撫でる。

二人は優一に怒られると思っていたが、褒められて安心した。

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