27話 オークション会場襲撃
残りオークションまで一日
夜明けまで後数時間。
ティファリアはオールワールドに《転移魔法》を設置して街へと戻って来ていた。
街から少し離れた場所、洞窟に三人とラティスは隠れていた。
「ある程度、人が集まったらティファリアが《転移魔法》作動させて人を向かうに送る。いいな!」
「「はい」」
「俺と琴音で街の奴隷にされた人達を攫ってくるからその間、ラティスの事は頼んだぞ」
「攫うなんて人聞きの悪い言い方やめて!救うの!」
「そうだな!」
三人は笑うと瞬時に気を引き締める。
優一と琴音は気を高めて、街へと向かう。
二人は夜中に琴音の呪文で鍵を開けた家に音も立てずに一瞬のうちに連れ出す。
次から次へと洞窟に奴隷の人達を移動させる。
奴隷の人達は何が起こったのか分からず茫然としていた。
だが、優一が一言放つと奴隷にされていた人達は長い地獄から解放された喜び悲しむ怒りを、空を引き裂くような大声をあげて喜びに打ち惹かれる。
「今日からお前たちは自由だあああああぁぁぁぁぁ!!」
朝日が昇ると、街では奴隷の主人たちが騒いでいた。
「どういうことだ!」
「うちの奴隷はどこにいったの!」
「俺の家にいた奴隷たちもいなくなったぞ」
街はパニック状態になっていた。
琴音の《グラビド》の効果をかかった人からティファリアの《転移魔法》で救い出した人達をオールワールドに転移していた。
「ラティスちゃんも先に行ってて!」
だがラティスは琴音から離れようとしない。
「随分、懐かれたな!」
杖を両手で地面に突き立てて《転移魔法》を作動していたティファリアが微笑む。
「ふふ。琴音さんお母さんみたいですね」
「琴音、先にオールワールドに言って皆を警護してあげて」
「分かったわ」
琴音はラティスを連れて先にオールワールドに向かうと、優一は街の上空へと移動する。
街の騒ぎはアナウンスと共にかき消される。
「お待たせしました。これより奴隷オークションを開催します。なんと!なーーーんと!!今日の目玉商品は獣人(ベスティア)・エルフ・元剣豪・そして人魚のホーリー族だあああああ」
アナウンスは街の騒ぎ声を歓声の声に変える。
優一はその光景を見て救いようがない連中だなと思う。
オークション会場は長蛇の列が出来、次々と中へ人が入って行く。
優一はオークション会場に忍び込み赤い椅子に座り紛れ込む。
客が満員になると入り口は封鎖され、オークションが始まる。
次々と首輪に鎖を繋がれた人達が順番に舞台に出されては落札されていく。
そして、オークションも終盤に入る。
「では、今回の目玉商品を紹介していこう!№73獣人(ベスティア)だあああああああああ」
会場のアナウンスが開始の合図をする前に次から次へと札をあげて金額を言っていく。
「10金貨」
「20金貨」
「40金貨」
「100金貨」
一人の男が一気にとんでもない額を言うと客たちが騒めく。
「おい見ろよ。アイツは王国騎士団のウィルソンだ」
「くそ。アイツが居たんじゃ勝ち目がない」
客たちは札をあげるのを止めるとウィルソンがニヤける。
「他にいませんか?では№73はウィルソン氏で決まりです!!」
会場の客は称える拍手を適当にする。
「続きまして№74エルフだああああああああああ」
「100金貨」
「おぉぉぉーーとまたしてもウィルソン氏が100金貨を提示しましたあぁぁぁーー!!。さぁ他にはいませんか?」
客たちは諦めた表情で落胆する。ある者は肘を付き、ある者は会場から去る。
「いませんね!それではウィルソン氏に決まりましたーー」
残った客立ちは、ただ人魚を見るためだけに残っており、札を床へ投げ捨てる。
「それでは続きまして№75剣豪ガレスうぅぅぅーー。この男は3年前に滅んだ王国の元聖騎士長の肩書を持ち、あのオールワールドの最も近い街を統治していた男!!さぁさあ誰かいないかね?」
「お~~と誰もいないか?それともウィルソン氏には勝てないとふんで札をあげないのか?」
会場は静まり誰も札をあげる事はなく沈黙が続くとウィルソンが札をあげる。
「1金貨」
人を馬鹿にする笑みを浮かべガレスを見るウィルソン氏。優一はその姿を見て苛立つ。
「誰もいませんね。それでは…」
アナウンスが投票を打ち切ろうとした瞬間、優一が札をあげる。
「100金貨」
ウィルソン氏は、予想外な表情を浮かべ慌てて札をあげる。
「200金貨」
二人の投票は続き、ガレスは500金貨でウィルソン氏が落札した。
予想外の出費で額に汗を流すウィルソン。
ふたりの競争に興奮した客たちは、床に捨てた札を拾い上げる。
「こうなったら何としても人魚を落札するぞ」
客立ちは活気づく中、最後の奴隷を紹介する。
(こうなったら先手必勝だ)
ウィルソン氏は人魚の入った水槽が前に運び込まれると同時に札をあげた。
「1000金貨!!」
客立ちは唖然とする。
「他にいませんか?」
客たちは札を床に叩きつけ、会場から出て行く。
「やってられるか」
「破産どころでは済まんわ!」
優一は客が会場の扉を開けよとした瞬間、扉に向けて気弾を放つ。
気弾は扉を破壊し辺りに轟音と共に煙が舞い上がる。
客たちは騒ぎ出すと同時に優一は壁の細工を壊して売れ残りで檻に入れていた人達を数秒のうちに洞窟に運び終える。
そして部隊の裏側にいたガレスとリリィと獣人(ベスティア)を救い出そうとした瞬間、ウィルソンに剣を向けられる。
「お前、何者だ!それは俺が落札した奴隷だ。勝手に持っていかれては困るのですよ」
優一はローブで隠れた状態でウィルソンを嘲笑う。そして、気弾を床に打ち込むと同時に洞窟に逃げ帰る。
「すまない。助け出すのに時間が掛かった」
優一はローブをとりガレスとリリィに顔を見せる。
「お、お主たち生きていたのか!よかった・・・よかった」
ガレスは痩せ細ったからで咳をする。今にも倒れこんで死にそうなガレスに優一は気遣う」
ガレスさんはここで休んで置いてくれ」
優一はリリィが全く反応しない事に気が付く。
「おい!リリィ!しっかりしろ!!」
だがリリィは緑色の綺麗な目は濁っており、精神状態が真面ではなかった。
「リリィは奴隷商人たちに薬漬けにされ、もう・・・真面に話すことは・・・」
優一は謝るとローブを被りオークション会場に戻った。
ウィルソンは、水槽に入ってた人魚を引きずり出していた。
魚の下半身をしていた人魚は水から出ると人間の二本足へと変わる。
「ほお、これは興味深い」
「おい・・・どこに行くんだ?その人魚もこちらに渡してもらおうか」
「誰が渡すか!これは俺のものだ」
ウィルソンの後ろには馬車を運転していた奴隷商人が隠れていた。
「旦那、早くアイツを倒してください」
優一は剣先を自分に向けているウィルソンを睨みつける。
すると、ウィルソンは吹き飛ばされて建物を何軒を貫通していく。
優一は意識を失っていた人魚を抱え上げると、商人の胸倉を掴む。
「おい!奴隷の刻印の解き方を教えろ」
「命だけは・・命だけはお助けを」
「返答次第で考えてやる」
「奴隷の刻印は、主と奴隷が血の契約をして成立する。主が死ぬと奴隷の刻印は消える。もう一つは世界樹の葉から落ちた聖水を刻印に掛けると契約が強制的に破棄される」
優一は商人の胸倉から手を離すと、洞窟に帰還した。
洞窟に戻ると琴音が後から助けた奴隷たちに《グラビド》をかけてエアストヴェルトに連れて帰っていた。
「おかえり兄さん!」
「ただいま。この子で最後だ」
優一は裸の人魚を琴音に預けるとガレスとリリィを抱えて《転移魔法》でエアストヴェルトに向かう。
ティファリアも転移すると《転移魔法》は解除された。
滅んだ国へ帰還した優一は、早速助けた人達を一列になる用に言う。
「ティファリア、さっきの街の上空の《転移魔法》は作れるか?」
「はい。出来ます」
再び《転移魔法》を作動すると、優一は目にも止まらない速さで、奴隷たちに付けられた鉄の首輪を外すと《転移魔法》に投げ込む。
街では奴隷達を全て救い出されて怒りの声で満ちていた。
「これからどうしたらいい」
「くそったれ!どのくらいお金を費やしたと思うんだ」
元主人たちが愚痴を零していると、空に魔法陣が現れ、優一が外した鉄の首輪が降り注ぐ。
「何だ、これは?」
一人の元主人が鉄の首輪を拾い上げると爆発をする。
それに同調するように道に落ちた鉄の首輪は次から次へと爆発をする。
街は壊滅状態になるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます