14話 境界

国の軍勢から逃げて三日後四人はエアストヴェルトまで残りわずかまで進んでいた。

「もう少しで境界に到達します」

空を見上げるとこちらは昼なのにあちらは太陽が沈んでおり、夜のようだ。

ミティシアに言われグラビドを解き身軽になると境界へ入り込む。

すると、琴音と優一は先ほど解いたばかりの《重力魔法》の効果が再発したかのように身体に負担がかかる。

「どういうことだ!」

「身体がグラビドに掛かったかのように身体が重いです」

「ここはオールワールドと違って重力が違うのです。それにオールワールドの人達がここになかなか攻め込めない理由の一つです」

ティファリアは故郷に帰って来たかのように両手を広げて大きく深呼吸しながら景色を眺めていた。

山頂から見える大陸・木々・見た事のない植物、オールワールドとは違い多種な生物が生息していた。

まるで今戦争が起きているのが嘘みたいに穏やかで静かな環境。

(ここがエアストヴェルトか・・・)

優一と琴音は綺麗な景色に見惚れていた。

「それでは向かいましょう」

四人は山頂から下山を始め目的地である隠家へと進んでいく。

                 ▽▽▽

下山を中断して休憩をしていると、小動物達がまるで四人を歓迎するかのように周りに集まってくる。

女性三人組は集まってきた小動物に木から採れた木の実を上げて楽しく愛でていた。

三人がリスや兎に似た動物に餌付けしている姿を見ながら優一は横になり休んでいると、優一の傍にも一匹の小動物が寄っていく。

「ん?悪いけど俺は餌もってないぞ」

「兄さんも上げてみてはどうですか?」

琴音とティファリアに優一は餌を手渡され受け取ると餌を与える。

小動物は美味しそうに餌を食べていると琴音とティファリアの傍に居た小動物達も近づいて来ておねだりをする。

三人で夢中になり餌やりをしていると、不意に優一はミティシアの方を見る。

優一はミティシアの餌を与えている姿を見て神々しさを感じ見惚れていると、それに気がついた琴音は咳払いをする。

「兄さん何見惚れているのですか?」

優一は動揺を抑えようと顔を無表情にするが・・・

「ち、違う!ただ珍しい生き物を見ていただけだ」

琴音は優一の頬をつねる。

「痛っ!?」

「人をいかがわしい目で見た罰です」

優一はつねられた頬を撫でながら琴音が何故怒ったのか理解できずにいた。

暫くすると四人は休憩を終えて下山を再開し、森を抜けるとそこは崩壊した国があった。

様々な建物からは草木が生えており、ひと際大きな建物、おそらくこの国で一番偉い人が住んでたであろう城も半壊していた。

「コレは!」

優一が滅んだ国を目にして驚いていた。

「ここは昔、他種族が集い暮らしていた国です。ですがその国を治めていた統治者が亡くなり、やがて国は衰退していき、一人また一人と人が居なくなっていったらしいです」

「そうか・・戦争で滅んだって訳では無いのだな」

「それにしてもどうしてここまで立派な国なのに統治者が亡くなっただけで国が崩壊するのですか?また新しい統治者を決めなかったの?」

琴音がミティシアに質問する。

「確かにそうですね。ですが国の人にとってはその方以外が国を治めるのが納得いかなかったのでしょう」

「俺達の居た世界では親族が継ぐとか選挙で新しい人を決めるのだけどな」

「私達の世界でもそれは同じです。ここが特別だっただけです」

ティファリアは崩れた城を何か懐かしそうに城を触りながら辺りを見渡す。

「ティファリアはここに来たことがあるのか?」

「いえ、私がここに来たのは初めてです・・・ですが何か懐かしいような感じがして・・・」

「そうか・・・」

優一も崩壊した国を見て同じような事を感じていた。


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