9話 賑やかな一日

「「「ご愁傷様です」」」

「・・・分かってくれたか」

四人はガゼフが用意してくれた家に戻ると家の中にはエルフのメイドが待っていた。

「おかえりなさいませ!ミティシア様、優一様、琴音様、ティファリア様」

「「「「ただいま」」」」

「お夕飯の支度は出来てますが何時頃に召し上がりますか?」

「すぐ食べますのでよろしくお願いします」

家の内装は隅々まで手入れされており綺麗に保たれていた。

四人は店で買った服をそれぞれ、ドアにカタカナでかかれた名前の札が掛かった部屋に置いて料理が準備された部屋へと向かった。

テーブルには豪華な料理が置かれており端の方にメイドが立っていた。

四人は席に座り料理を食べようとするが優一はメイドに声を掛ける。

「メイドさんは食べないの?」

「滅相もございません!私など皆様が残されたので十分です」

「厨房はどこにあるの?」

「お隣の部屋にあります」

四人は厨房へと向かいフォークとナイフ皿を一つずつ持ってきた。

「メイドさんも一緒に食べよ!」

「え~と名前は何て言うの?」

「・・リリィです」

「リリィも一緒に食べるぞ」

優一は何処からか持ってきた椅子にリリィを座らせる。

「それじゃあ」

「「「「いただきます」」」」

四人がご飯を食べ出すとリリィも縮こまってご飯を食べる。

「リリィさん早く食べないと三人があっという間に全部食べてしまいますよ」

リリィは三人の食べる速さを見て驚く。

机の上に並べられた料理はあっという間に無くなると。

「リリィさんお替りはまだあります?」

「す、すぐにお持ちします」

リリィが席から立ち上がるといつの間にか厨房に行っていた優一が鍋を持って食卓に戻ってくる。

「まだ厨房にいっぱい料理があったぞ!」

優一はテーブルに鍋を置くと皆の皿につぐ。

「リリィもお替りするだろ?」

優一はリリィの有無も聞かずに皿に料理を盛る。

五人はご飯を食べ終わるとリリィがお礼を言う。

「皆様とご飯をご一緒させていただきありがとうございます」

「お礼を言わなくても、今度からリリィも一緒に食べような」

「いえ、私なんかが一緒に食事をするなんてとても失礼なことです」

「何言ってんだ?皆で食べた方が楽しいし美味しいだろ?」

「リリィさん私達にそこまで気を使わなくても良いですよ」

優一とティファリアがリリィと話しているとミティシアと琴音が食べ終わった皿を厨房に運ぼうとしていた。

「そ、それは私がしますので、皆様は先に休んでいてください!お風呂の準備が出来たらお呼びますので」

「いいのよ。私達にも手伝わせて」

「それじゃあ俺はお風呂の支度するな!ティファリアも手伝って」

優一とティファリアはお風呂場へ向かうとリリィは食べ終わった皿を持って琴音とミティシアの後を付いて行った。

優一とティファリアがお風呂場につくと、お風呂はかなり広く、石造りで出来ており大きな壺や様々な形をした湯船に水がいっぱいに入っていた。

優一はお風呂場に置いてあったブラシを握るとティファリアは桶の水を撒いて石造りの床を濡らして優一が手際よく掃除を終わらせる。

「後はこの石の湯船に水を沸かすだけだな」

ティファリアは両手を上に広げて呪文を唱える。

「『ウォータークーゲル』」

ティファリアは先ほど使った壺にゆっくりとに水球を入れるとあっという間に壺が満タンになった。

「どうやってお湯を沸かすんだろ?」

優一はいつも家の機械で沸かしていたがレトロのお風呂の沸かし方が分からない。

(外に出てからマキで沸かすのかな?)

二人は外に出て家の裏側に回りマキを入れて火を付ける。

「『フレイ』」

「これはかなり時間が掛かりそうだな。それに火が弱まったらお湯が冷めそうだし」

優一はそう言ってマキを次々と中へ入れていき仰ぐ。

「優一さんあまり強く仰いでは駄目ですよ。火が消えてしまいますから」

「分かった」

優一はゆっくり仰ぐと火は徐々に大きくなりマキを足して家に入った。

「あれだけマキを入れたら大丈夫だろ!」

「そうですね」

リビングに戻ると皿洗いが終わったのか琴音が笑顔で待っていた。

「兄さんティファリアちゃんお疲れ様」

「おう」

琴音の顔から笑顔が消えると優一は震えティファリアも尻尾が逆立つ。

「二人とも沸かしすぎ!お湯がブクブクと煮えたぎってるよ!」

二人は正座して琴音から説教をされる。

「今ミティシアさんとリリィちゃんが水を足してからお湯を冷ましてます」

「ごめん!やりすぎた」

優一は笑いながら言い琴音は呆れてため息をつく。

「お湯が丁度良くなったら先に女性陣から入りますよ」

「分かった」

「はい・・・」

説教が終わると四人はお風呂に入った。リリィも最初は断っていたが押し切られて渋々お風呂に入る。

優一は女性陣がお風呂に上がるまで瞑想をしていた。

(もう少し、もう少しでコツが掴める)

優一が瞑想していると四人が風呂から上がってきてリビングに戻ってきた。

四人は優一の姿をみて驚く。

「兄さんが浮いてる!」

優一は瞑想を止めると地に足をつく。

「今のどうやってやったのですか!」

ティファリアが興味津々に聞いてくる。

「アレは空を飛ぶ練習をしてたんだ」

「「どうやってやったら出来るの!」」

琴音とティファリアは声を合わせて言う。

「万有引力の法則を応用してやったんだ」

「なるほど!」

琴音はそれを聞いてすぐに納得するがティファリアは首を傾げる。

「万有引力?」

優一はソファーに置いてあった枕を持って床に落とす。

「今枕が床に落ちただろ?これは枕がこの世界の重力に引っ張られたから。ミティシアやティファリアが使う魔法、グラビドは身体の重さをイメージして唱えてるだろ?」

「はい。私は身体の重さを増やすイメージをして唱えてます。それに魔力の強さによって威力は変わります」

ティファリアは何か分かったかのように閃く。

「そう。地面が俺を引き寄せるように俺も地面を気で引き寄せるイメージをしたんだ。そしたらお互いに引き合う力は反発して身体が宙に浮いたんだ」

「凄いです!優一さん」

四人は感心した眼差しを優一に向ける。

「だけど、まだ宙に浮くことしか出来ないから空を自由に飛ぶことが出来ない。それにミティシアも魔法陣で宙に浮いていたからあっちの方が良いかもしれない」

「私の魔法は宙に浮く事は出来ますがあまり早く飛ぶことは出来ません。もし優一さんの飛ぶ方法が上手くいけば私の使っていた浮遊魔法よりも遥か早く飛べると思います」

「そうか。なら自由に飛べるようになったら皆にも教えてあげるからそれまで待ってな」

優一はそう言ってお風呂へと向かった。

「ふぅ~やっぱりお風呂はいいな!旅に出るときは正直不安だったが風呂に入るとリラックスできるな」

まだ一日しか経ってないけどな。

優一がお風呂を満喫していると脱衣所の方からリリィの声がした。

「優一様、良かったらお背中流しましょうか?」

「リ、リリィ!?」

「はい」

「いや!大丈夫だ。自分で流せるから部屋に戻ってゆっくり休んでいてくれ!」

「それはなりません。メイドたるものご主人様のお背中を流すのは当然です」

(俺の有無を確認する必要はあったなのか?)

優一が心の中でそう考えているとドアガラス越しからバスタオルを身体に巻いたリリィが映っていた。

リリィはドアを開けようとするが開ける事が出来なかった。優一は予め予想してドアに板を咬ませて開かないようにしていたのだ。

「あれ?開きません。優一様ドアを開けてください!」

「だからいいって」

するとドア越しから呪文を唱える声がした。

ドアに挟んでいた板は《風魔法》で外れてリリィが中に入ってくる。

「ス、ストップ!」

優一が大声で言うもリリィはグイグイと近寄ってきて優一の背中を流そうとする。

すると優一の大声が外まで聞こえたのか琴音がやって来て脱衣所の中に入ってきた。

「兄さん何騒いでるの?」

「優一さん大丈夫ですか?」

優一は咄嗟にリリィを背中に隠して誤魔化す。

「なな、何でもない大丈夫だ」

「そう?」

琴音は脱衣所に綺麗に畳んで置いてあるメイド服を見て言う。

「そういえば・・兄さん・・・リリィちゃんが見当たらないのですけど・・・兄さん知らない?」

「うん?俺はずっと風呂に入ってたから知らないぞ」

「そう・・・」

すると風呂のドアを琴音が勢いよく開ける。しかし琴音だけだと思っていた優一は横にはティファリアも居たことに驚く。

「兄さんはお風呂から上がったらメイド服でも着るつもりなの?」

「えっ?」

するとリリィは優一の背後から出て謝罪する。

「申し訳ございません!!私が優一様の背中を無理に流そうとして、それで」

「琴音コレは違うんだ!」

優一も必死に言い訳をする。

「兄さん?」

「はい!」

「他に言い残すことはありますか?」

優一は胸を張る。

「俺は悪くない!」

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