第3話 架け橋

今までにない以上、ゆっくりと出来ているアルベルトたちの元へ、以前見た、半獣人の騎士がやってきた。


「なんですか?」

「姫様が呼んでいる。一緒に来てくれないか?」

「俺だけで?」

「そうだ」

みんなの方を見ると、全員で遊んでおり、こちらのことなど気にしていなかった。


「・・・・・行きます」

「そうか。助かるよ」

誰にも相手にされないまま、騎士の後を追った。



「それで、なんで姫様が?」

「知らん。ただ、この地区にいる人間の男を連れてこいと言われただけだ」

「他にいないのか?」

「この地区は、獣人しかいない。あとは、お前たちのような不法入国者だけだ」

「え、不法入国?俺たちが?」

俺たち普通に、空から・・・・・・。

あ、なんの審査とかもしてないな。


「心配するな。それは、人間たちだけが行っていること。ここは自由だ」

「それはよかった」

それでも、人間からしたら、ここに入るのも許可を取らないといけないらしく、不法入国には変わり無いようだ。


それにしても本当に人間が一人もいない。

この人の言う通り、獣人しかいない地区のようだ。

共生国家だと聞いたが、これでは共生になっていない。


「ここは、共生国家じゃなかったのか?」

「それは・・・・・・」

「なんか理由があるのか?」

「すまんが、そういう話は姫様に聞いてくれ」

また、なんか起きそうだなあー。

あー、せっかくゆっくり出来てたのに。



「ここだ」

騎士の足が止まり、目の前に大きいが、綺麗とは言えない屋敷が建っていた。

ここが、王族の住む場所か?


門番に説明をし、騎士と共に中に入った。

入った瞬間、姫様の視線を感じる。


「姫様って、いつも視てるのか?」

「わかるのか?」

「まあ、なんとなくだけど」

実際は、どこから視てるのかもわかるが、はぐらかした。


「獣人族は、敏感な種族でな。特に今は、いつも以上に気を張っている」

「なるほど・・・・」

これは、何か起こること確定だな。


「ティア様、お連れしました」

「どうぞ」

中から、か細い声が聞こえてきた。


「失礼します」

騎士が入り、続いて俺も入っていく。


「どうも」

「ふふ、思った通り・・・・」

ティア様は、騎士を部屋から出し、二人で話したいと言ってきた。


「いいですけど、何を話すんですか?」

「まずは、お互いのことを話しませんか?」

「わかりました」

「では、私から。私は、ティア・イングリス、この国に住む獣人族の王族です」

「私は、アルベルトです。普通の人間です」


その後、軽い世間話を繰り返し、馴染んできたところで、ここまで来るときに気になったことを聞くことにした。


「この国で、これから何か起こるんですか?」

「・・・・・どうしてですか?」

「この国に来て、獣人の異様な殺気と人間の刺客に襲われたこと、それが向こうの王家の判断だと言うこと。それから・・・・」

まだまだあるが、全部を言う前にティア様が止めてきた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。刺客に襲われた?いつ?」

「ちょうど、あなたが帰ってきた日です」

「そうですか・・・・・」

明らかに落ち込んだティア様に、後悔するとわかってこう言った。


「手伝いましょうか?」


「よろしいのですか?」

「はい。関係ないのはわかってますが、身内が襲われたもんで」

不法入国しといて、なんだが関わった手前、放っとけない。


「それから、彼女、ハーフで、あなたと同じ血が流れているのは、何か理由があるのですか?」

そう言った瞬間に、隠密の護衛だろうか、いくつかの殺気が飛んで来た。

それを、ティア様が手で制す。


「・・・・・なぜそれを?」

「視ればわかりますよ」

「もしかして、私と同じですか?」

「あなたの眼がどこまでのものかは知りませんが、似たようなものだと思います」

しばらくの間、ティア様が俯き、沈黙が流れた。


「彼女と私の母は同じ獣人の女性でした」

「でした?」

「はい、母は、父との間に私を授かり、育ててくれました。しかし、ある時人間が獣人族を襲ってきたのです」

その当時は、人間も獣人も一緒に暮らす共生国家だったらしく、王族同士で関わりがあっったようだ。


「その日はちょうど、満月が終わり、獣人族が最も弱っている日でした。その襲撃に乗じて人間の王が母を攫い、父を殺して、獣人族は今いるこの地区のみに追いやられました」

なるほど、これは、一番嫌いなパターンだな。


「母を取り返そうと、決起を図ろうと満月の夜を待っていたとき、母が戻ってきたんです。それも、赤ん坊を抱えて」

「それが、彼女だと?」

「はい、当時歳も近かった私の護衛として育てるように母が言い残したらしく、今の関係に」

つまりは、両親を亡くした彼女を、あの護衛の人と一緒にこの国の獣人が育ててきたんだな。

王族の血を引く彼女、人間と獣人のハーフであるが王族の血を引く彼女。

『架け橋』の意味がわかった。


「彼女を、人間との融和の象徴として守ってるんですね」

「その通りです」


「それと、満月を待ったって、満月だと何かが変わるのですか?」

「我々獣人族は、月の影響を大きく受けます。つまり、月が一番満たされた満月の日、種族特性が使えるのです」

「変身みたいな事ですか?」

向こうの世界の童話にも、月を見て変身する生き物がいた。


「そんな感じです。基本的には、身体能力が少なくとも十倍に膨れ上がりますが、次の日は全くと言っていいほど動けなくなるのです」

「反動か・・・・・」

だから、さっき言っていた襲撃の日を満月が終わった次の日にしたのか。


「なので、アルベルトさんには、満月の日、融和を支持してくれている人間の保護と同時に、あの日、父と母を殺した人間への復讐を手伝って欲しいのです」

「いいですよ。ここまで話を聞いたからには、協力します」

「ありがとうございます!」


その後満月の夜の日を聞き、その日までは、静かに過ごすようにと言われたが、元からそうするつもりだった。

ティア様と別れ、屋敷から出ていく。



その帰り道・・・・・


(満月か・・・・・)

どうしたんですか?

(いや、僕も過去に一度だけ、満月の日に獣人族と共に戦ったけど、それはもう綺麗だったよ)

綺麗なんですか?

(うん、”月下獣”っていうらしいんだけどね)

それは、名前からして想像がつきますね。

(多分想像以上だよ)

へえ、それは期待しときますね。


そこで、マルスさんとのリンクが切れた。

それと同時に、久しぶりにあの二人とリンクが繋がった。


((久しぶりー))

ほんとに久しぶりだよ。どこ行ってたの?


この二人は、精霊卿に入ってから、今日までリンクを繋ごうとしても繋がらなかった。


(僕たちも修行?してたんだよー)

(だよー)

へえ、どんなことしてたの?

(んーっとね、こんなことできるようになった!)


アダムとハナが、眼から出てきた。

二人は手を繋ぎ、えいっと声をあげる。

すると、小さかった二人が消え、そこには、創造神コウタロウさんと同じくらいの少年がいた。


「もしかして、合体したの?」

「うん!これで、君と自由に話せるようになった!」

「すごい!」

「でも、この姿は君にしか見えないんだよ。コウタロウがそう決めたから」

「そうなんだ。でも、それだけでもすごいよ」

「ほんと!?」

二人は、合体したことで中性的な声になり、褒めて欲しそうに頭を出してくる。


その頭を撫でながら、この二人が何ができるのか聞いた。


「二人は、その姿だったら何ができるの?」

「んー、なんでも?」

「なんでも?」

「うん!僕たちは、コウタロウの代行者だから!」

なんだそれ、初めて聞いたぞそんな情報。


「ってことは、もしかして満月を人工的に作れたりする?」

「できるよー。世界に影響が及ばないようにね」

そうか、もうなんでもありだな。


しかし、これで、獣人族の戦闘時間が延ばせるし、もし、月が隠れてても人工的に作れる。

今回手を貸すことにした、獣人族のみんながこれで負ける事はないし、とんでもな靴用意奴が出てきた時に手を貸すだけでいい。


「あ、着いたな」

アダムとハナと話していたら、いつの間にか宿に着いた。


「どうする?」

「戻っておくよー」

二人は、元の姿に戻り、眼の中に帰っていった。


((またねー))

うん、またね。


久しぶりの会話を終え、宿の中に入って行った。


部屋の前につき、扉を開けると、中では、水着の見せ合いが行われていた。

ラキナは寝ているが、他のみんなの中には半裸の人もいる。


「なっ、なっ・・・・・・」

「ご、ごめんなさい・・・・・」

しっかりと、アリス以外の魔弾を受け、潔く気を失った。



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