第2話 ムラマサさん

アルベルトが、日の国に入国し、早速やったこと。

それは、


ーーー土下座だった。



「お願いします!!」

「断る」

「そこをなんとか!!」

「断る」


「大将!!」

「誰が大将だ!」


アルベルトは、ムラマサに刀を打ってもらうため、自分の神力と魔力の詰まった魔石、そして選別にもらった”不死鳥の尾羽”に”富士の霊薬”、折れた天乃尾羽張をムラマサに差し出しながら土下座をしていた。


「ムラマサ様、私からもどうかお願いします」

サクラが膝をつき、頭を下げた。

「サクラ・・・・・」

「うっ・・・・。だ・・・だめだ・・・」


お?

これは・・・・。ムラマサさん、もしかして。


アリスたちに目を向ける。

アリスとアイナは、小さく頷きムラマサさんの近くに行った。


「お願い、おじいちゃん」「お願いします、ムラマサ様」

みんなに、こんなことをしてもらうのは気が引けるが、この人は英雄の刀を打った人だし、そこらにおいてある刀を見て確信した。

この人、本物だと。


神匠と呼ばれる所以が作品からわかる。

本物には、本物の魂が宿る。

この部屋には、何本もの刀が雑に置かれているが、一つ一つが国宝級だ。

この人が世界最高級の素材を持って刀を打てばどんなものが出来上がるのか知りたい。


「う、あ、う。・・・・・わかった・・・・」

美女二人に迫られ、神匠は折れた。

「ありがとう!」

「「「ありがとうございます!」」」

声を揃えて、お礼を言った。


では、置いときますね、と素材を置き、部屋から出た。

一年ぐらいかかるそうだ。


「あれ、そういえば、ラキナは?」

いつの間にかになくなっている。

「ラキナ様なら知り合いに会いに行くって言ってたわよ」

「あ、そうなの?」

そうだよな。知り合いぐらいいるか。


「なあ、桜の木のところに行っていい?」

一度、見に行きたい。

『霊峰』で、毎日のように見ていたが、あんなに巨大なものは見たことがない。

「いいよ。私も行きたい」

「あそこで、ご飯にしましょうか」

「それはいいな」


「え?」


「なんじゃ?」

「いや、いつの間に?」

ご飯の話をした瞬間にラキナが現れた。


「飯の話が聞こえたからの」

「お前・・・・・・。いや、なんでもない」

「ならばさっさと行くぞ」

ラキナのやつ、ほんとに欲望を隠さないやつだな。

まあ、そっちの方がありがたいけど・・・・・。





「よし、ここら辺でいいんじゃないか?」

桜の木で影になっている場所に机やら椅子やらを出し、準備をした。

アイナとサクラが料理をしている間、アルベルトたちは、ムラマサところに向かった。


「ムラマサさんー。今から食事なんですが、よければ一緒に・・・・・」

「うん?おー、お前さんたちがラキナ様の」

いかにも武人って感じの無精髭のおっさんがいた。


「あの、あなたは?」

「俺か?俺は、日の国の王だよ」

王様だった。


「これは、失礼しました」

「いや、いいぞ別に。畏まられるのは好かんからな」

「はあ、ありがとうございます・・・・・」

気分のいい王様だな。

こういうリーダーが好かれるんだろうな。


「で、なんだって?今から飯だと?」

「はい。なので、今後の付き合いも兼ねてムラマサさんを誘おうと・・・・」

「お、いいねー。ムラマサ行くぞ」

「へいへい・・・・・」

ムラマサさんは、王様の言葉に渋々従った。


予定とは、だいぶ違う人も来たが、食事には国の子供たちや食材をくれた人たちが参加し、大盛り上がりだった。

アイナとサクラは、子供の扱いに長けていて食後は、子供たちと遊んでいた。


「お前さんらは、これからどうするんだ?」

王様から聞かれた。

「そうですね。刀が出来上がったら帝国に乗り込もうかと」

「帝国に?」

王様の表情がこわばった。

自分の国が2度も襲われ、秘宝と爺さんの命を奪っていったのだ。


「何をしに行くんだ?」

「ラキナが言うには、帝国に入り込んでいる味方がいるらしいので、会いに行くついでに仇討ちをしに行こうかと」

サクラの師匠でもあるし、ラキナの旧友でもあるから、この仇討ちには意味がある。


「彼女のことですか・・・」

「そうじゃ。ところで、ジンベエはどこに行った?」

ジンベエ?

誰だそれ。


「あー、彼なら放浪すると言って出て行ったきりです」

「またか・・・・・」

ラキナに呆れられるほどなのか!?

それは、恐ろしい・・・・・。


「おい、なにか失礼なこと考えてないか?」

「いえ、そんなことないですよー」

ぶん殴られた。





「小僧、最強の刀が欲しいと言ったな」

ムラマサさんが話しかけてきた。


「はい」

「なら、お前の血をよこせ」

「血を?」

「ああ。確かに、あの素材ならば普通に最強の武器はできる」

ならいいんじゃないの?


「最強だが、あくまで普通レベルだ。しかし、血を使えば刀は生き物になる。お前の力に比例して成長をし続け、中には人型になるものもある」


人型!?

まさか擬人化ってやつですか!?

ゴクリ・・・・・。


「アル?」

アリスが伺ってくる。


「是非使ってくれ」

ムラマサさんから言われた量を抜き取り、渡した。


「任せろ。最高・最強の刀を作ってやる」

初めて、本人の口からその言葉を聞き、嬉しくなった。

ムラマサさんと握手をし、彼は、そのまま鍛冶場へ行った。




◆◆




「ジンベエ様、ミア様からの言伝です」

「わかってる。コジロウのことだろ?」

「ご存知でしたか」


ジンベエは常に、世界中の気の流れを読むことができる。

特に、故郷の人間と知り合いの気は常に感じ取っている。


「ああ、コジロウの気がなくなったからな」

「それから、もう一つなのですが」

「他になんかあるのか?」


「帝国が、あの少年を敵と認定しました」

「なに?」

ジンベエの放つ覇気が変わる。


「・・・・・・・・・・」

王都で確認した少年の気を探る。


「ハッ。心配すんなと伝えてくれ。それから、少年がそっちに行ったら協力しろとも」

「わかりました」

フードの女は、トンボ返りで帝国にいるミアの元に行った。


「数百年繁栄した、大帝国の運命もここまでか・・・・・」

改めて視た少年の気を感じ、帝国の未来を確信した。




◆◆




「どうしてこうなった?」

目の前には、日の国の戦士団長と忍隊長が立っていた。




〜食事後のこと〜


王様や食事を共にした人たちと話していた時。


「なんだ〜お前らはぁ」

いかにもウザそうな連中がやってきた。


無視だな。


「この後どうする?」

「んー。どうしよっか」

「それなら、俺のところに来ねえか?」

王様が提案してくれた。


何もすることないし、それがいいな。

「なら、お邪魔します」

「おう、なら早速行こうか」


「おっさん、どけよ。俺らはそこの女にようがあんだよ」

王様に向かっておっさんって・・・・。


「あー、俺実は表に出たことないんだよ。だから、俺のこと知ってるのは一部のやつだけなんだ」

小声で教えてくれた。

なるほど。


「ねえねえ、そこの美人さーん、俺らと遊ばない?」

ニヤニヤと体を見回しながら言った。

見るだけならまだいい。でも、もし触ろうとしたら・・・・・。


「アル、行かないの?」

無視ですか。

さすが、アリス。


「そうだね。行こうか」


「だからぁ、こっちに来いって・・・・!!」

ブシャーッと男の腕が失くなった。


「え、え?・・・・ああああああ!!腕がああああ!!」

ああ、うるさい。

王様に目を向けると許してくれた。


バシュッ!!


喚いていた男が血溜まりになった。


「よし、行こうか」

「そうだね」

「容赦ないのー」

アイナとセナを呼びに行き、王城へと向かおうとした。


「お、おい待てっ!」

「なに?」

前回の殺気を取り巻きの男たちに放った。


「あひゅっ・・・・」

ドサドサと倒れた。

死んだな。


「なんだ?」

今度は二つの気配が迫ってきた。


「あ、おまえら!」

王様が反応する。

なら味方なのか。


一人は刀、一人は直剣・・・・・忍者だ!!

やばい、早速会えた!!


「貴様何奴!!」

しかも、セリフがそれっぽいー!!


二人に、斬られる。

「「!?」」


だが、斬られた箇所は魔力が漂い、流動する体となっていた。


しかし、二人の動揺は小さく、すぐに王様の前に立ち、こちらに刃を向けてきた。

「王よ、この男は・・・・・」

「友人だよ。大丈夫だ」

「そうでしたか。しかし、このまま負けたままでは戦士団長と忍隊長の名折れ」

「それゆえ、貴殿に手合わせを願いたい」

忍者に頼まれたら、断れないなー。


「いいですよ」


そして、二人との戦いが始まった。






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