第8話 頂上へ

ーー翌朝。


「今から、頂上に、『不死鳥』のところに行くけど、準備はいい?」

今日は、ついに頂上にいく日。

登山を始めて、約五日、ようやく辿り着いた。

あそこが『霊峰』だといいんだけど。


「いいよー」「問題ない」

みんなが頷いたところで、外に出る。



「あれ、暑くない?」

外は、全くと言っていいほど暑くなく。

心地の良い気温だった。

もしかして・・・・・。


頂上を見る。

やっぱり、『不死鳥』がいない。

「アル、どうだった?」

セナが聞いてくる。

「うん。今ならいない」

「なら!」

「ああ、今のうちに行き着くしかない」

また、『不死鳥』がくれば、ここは灼熱へと変わる。その前に、頂上へ。


「行こう!」




◆◆




その頃、王都冒険者ギルドにて


「はあ・・・・・」

「どうしたの?エマ」

ため息を吐いた私に声をかけてきたのは同僚の一人だ。


「いえ、ちょっとね」

「あ、もしかしてエマのお気に入りの子のこと?」

手元を覗き込みながら、顔をニヤつかせ聞いてきた。


「別にそんなんじゃないけど・・・・」

「嘘だ〜。あの子が行ってから毎日そんな感じじゃん」

「え・・・・・・」

「え、って。気づいてないのエマぐらいだよ?」

そこまで、態度に出てたの?

職業柄かそれとも単なる興味か、あの子のことが頭から離れない。


「今、あの『霊峰』探してるんでしょ?」

「そう言ってたわね」

「あるのかな〜。世界の秘境の一つなんて、この大陸に」

「さあ、私はあまりこの大陸に詳しくないから」

「そっか、外から来たって言ってたね」

私は、この大陸の出身ではなく、訳あって故郷を出てきた。


「でも、あの英雄君なら見つけるかもね〜」

「そうね」

あの『霊峰』の存在を確認したのは、あの冒険王だけ。

あれほど行き当たりばったりの冒険者は今も昔も彼だけ。

五大大陸クエストの怪物の存在も彼が証明した。


「見つけるかもね」

「あら、珍しい。そこまで期待してるの?」

「まあね」

昔、になった時のことを思い出しながら、あの少年のことを思う。


「エマ君。手紙が来てるよ」

上の階からギルドマスターが教えてくれた。

「はい、今行きます」

「じゃあ、また後でね」

同僚と別れ、上に向かった。


手紙を受け取り、内容をみる。

「げ。もうなの?」

内容は、一度帰ってくるようにとのお願いだった。


「はあ、めんどくさい・・・・」

でも、しょうがないか。

最高神がまた表舞台にあがろうとしてるのだから。


「マスター、少しも間休暇をもらいますね」

「いいけど、どれくらい?」

「うーん、実家に帰るので半年くらい?」

「わかった。でもなるべく早く帰ってきてくれよ」

「頑張ります」



家に帰り、急いで荷造りをして、魔法陣を展開する。

「転移:


木造の家から、禍々しい城へ景色が変わる。

「お帰りなさいませ。

「ええ、ただいま」

会議室には、六人の魔族が座っていた。

相変わらずね。


私は、エマ。

職業は、冒険者ギルドの受付嬢兼、

魑魅魍魎が跋扈する、魔大陸を統べる魔王だ。


「はあ、無事かな。アルベルト君は」




◆◆




「着いた・・・・・」

「ここが、『霊峰』?」

アイナが疑問を呈すが、ここではない気がする。


「いや、魔素がそんな感じじゃない」

「じゃな。ここは、『霊峰』ではない」

「ラキナは行ったことあるの?」

「いや、長い時を生きておるが、妾はないな。昔、何人か行ったと話しておったが」

少なくとも、マルスは行っているのだろう。

そうでもないと、月詠は作れていないはず。


「とりあえず、辺りを散策するか」

「そうだね」「そうね」

六人で手分けすれば何か出てくるだろう。



◆◆



「ん?これは、なんでしょうか?」

サクラは、建造物の瓦礫の中に、何かが書かれた石板を見つけた。

手に取り、読み取ろうとした。


「この文字は一体・・・・」

見たこともない文字が書かれていた。

これは、読めないな。

長老なら、あるいは、アルなら・・・・。

とりあえず、持っておくか。


アイテムボックスに入れ、散策を再開した。




◆◆




「ここが、『霊峰』じゃないのか?」

確かに、魔力はすごく濃い。

でも、普通の魔力だ。なんの神聖さもない。

いや、別に『霊峰』が神聖さのあるところとは限らないもんな。


それにしても、なんでこんなところに建造物があるんだよ。

人でも住んでたのか?

それにしては、仰々しい作りだなー。


「お、あそこに何かあるな」

なんか、コソ泥みたいだな、俺たち。


「これは、石板だな・・・・」

なになに?

軽い気持ちで読んだことを後悔した。


「日本語?」

なんで?

なんで日本語がこの世界に・・・・・。

他にもいるのか?

いつの時代にこの世界に?


考えれば考えるほど分からなくなってくる。

ひとまず内容を見てみるか。


”こっちの世界に転移して10年が過ぎた。相変わらず自由にやってきた。魔法を使い、前世以上の楽しい人生だ。科学の知識を応用した、新魔法の開発に、念願の米のを作った。10年目にして、日本らしい食事ができる。一緒に来た同胞も喜んでくれた。次は、味噌だな。でも、この世界には、人や魔族、獣人などがいるが数が少ない。それに、魔物がいない。そこで作ることにした。まずは、不死鳥だな。なんか、かっこいいし。  コウタロウより。”


ツッコミどころがありすぎる。

まずは、米を作ったのがこの人だという事。

それに、いつの時代の人なんだよ。

というか、『不死鳥』を作ろうって、どういう・・・・・。


「アル!!」

叫び声が聞こえた。

その声で、深い思考から抜け出し、後ろを振り向いた。


「うへ?」

変な声が出た。

”お前は、なんだ?”

目の前には、『不死鳥』さんがいた。


「こ、こんにちわ・・・・・・」

”質問に答えろ”

挨拶しかできなかった。

なに言ってんだ俺は・・・・・。


”もう一度聞く、お前はなんだ?”

「あ、アルベルトです」

”そういうことを聞いているのではない”

えー、じゃあなんなんだよ。


”では、聞き方を変えようか”

『不死鳥』の後ろでは、アリスたちが武器を構えている。

ラキナだけは、普通に立っていた。


”お前は、なぜそれを読める?”

「これのこと・・・・ですか?」

手に持った、石板を見せる。

”そうだ。それは、我々の主人が書いた異世界の文字だぞ”

アリスたちには聞こえていないようだ。

気を利かせてくれてんのかな?


「あなたの主人と同郷のものです」

”・・・・・・そうか”

「あの、それで、ここはなんなんですか?」

”ここは、主人の研究施設だ。我々はここで生まれた”

「そ、そうなんですね」

なにを言いに来たのだろうか。

やはり、勝手に入ったのがだめだったのか?


”『霊峰』目的で来たのだろう?”

「は、はい」

威圧感ハンパねー!!

”ならば、我と戦い生き残ってみろ。後ろの小娘たちもだ”

「時間は?」

”一時間だ。その時間生き残ってみよ”


『不死鳥』は飛び上がり、その翼を羽ばたかせた。


ブワァッ!!


熱波が爆風とともに襲ってくる。

肌を晒している、顔と腕に火傷を負う。

傷は、すぐに治るが、ただの羽ばたきでこの影響は予想以上だ。


『不死鳥』が火球を生み出し、アリスたちに放つ。

「サクラ!!」

アリスがいつになく真剣な顔で、挑んでいる。

「ああ、任された!」


サクラが、前に飛び出し、英雄の宴で出した構えをとった。

「守護剣術:灯籠流し」

火球を一つ一つ刀で流し、かわしていく。

「今だ、アリス!!」

その掛け声とともに、アリスが飛び出し、『不死鳥』の前に翔んだ。


「はあ!!」

一閃。

ボウッ。やはり、実体はないのか、ただの炎を斬ったように揺らいだ。


だったら、

「氷魔法:絶対氷結コキュートス!!」

『不死鳥』自体を凍らせる。


「アイナ!!今だ!」

「次元層刃!」

捌く者で、氷ごと次元を斬る。


ピシッと氷の塊がずれ、中の『不死鳥』もずれる。

氷の塊が落ち、砕ける。

そこに僅かな炎の残滓が。


その炎が渦を巻き、『不死鳥』へと成る。


「あれ?さっきより強くなってない?」

最初よりも纏う魔力と覇気が強くなっていた。

なんで?


”我は、主人より、死ねば死ぬほど強くなれと。そういう願いから作られた”


なんだよそれ。

コウタロウさん、やりすぎだって。


「精霊魔法:水牢」

セナが復活した『不死鳥』を水に閉じ込める。

それを見て、足元にある石を広い、魔力を込め足跡の魔道具を作る。

「おらあ!!」

全力で投げた石は、水牢に入り、砕ける。

「放電しろ!!」

バチィ!!

水に電流し、『不死鳥』を大量の電気が襲う。


”無駄だ。我には、魔法はきかん。我々は、主人の力を全て受け継いでおる”


は?

魔法が効かないって、まさか!

慌てて、使わないようにしてきた鑑定を、神眼をもって『不死鳥』に向ける。



『名前』フェニックス

『種族』不死鳥 『性別』ー 『年齢』ー

『能力』ー


『原初』

輪廻転生


『特性』

物理攻撃無効 魔法攻撃無効 即死無効 



『輪廻転生』死ぬと復活する。その度に強くなり続ける。成長限界なし。



バケモンかよ。

死ぬたびに強くなるのは、本人から聞いてたが、改めてやばさを実感した。

魔法が効かないのは、魔法攻撃無効の効果だ。

『特性』は、天界でアダムたちと繋がった際に見えるようになった。


「全員、生き残ることを考えろ!!こいつにはなにも効かない!!」

今まで、手を出さず、全く動いていないラキナも、これには気を引き締めた。


”だから、言っただろう。生き残れと”


「ここまでやばいとは思ってなかったんだよ」

「アル坊!虚無を試すぞ!」

ラキナが叫ぶ。

なるほど、死なないならいっそのこと別次元に飛ばして、その次元ごと消そうと。

「了解!」


「みんな、しばらく頼んだ!」

「おっけー」「わかったわ」

「わかった」「了解した」

アリスたちにしばらく時間を稼いでもらう。


「いいかアル坊。あれは、妾とお主が挟み込まなければできなかったが、今なら魔力だけでいけるかもしれん」

「魔力だけで?」

「ああ、アル坊は刀で、虚無の片割れの魔力を、妾は黒舞でもう一つを奴にぶつける」

「でも、あの魔力は」

「ああ、下手したら暴走する。じゃが、アル坊には神力があるじゃろ?」

「なるほど」


神力があれば、あの暴れん坊な魔力を抑えられる。

虚無の魔力は、諸刃の剣だが、当たれば神でさえ葬り去れる。


「行くぞ」

「ああ、やってやろう」


上空では、爆発音や雷が落ちる音が聞こえる。

そんな中、二人は、それぞれの武器に魔力を纏い始めた。






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